vol.040 「家族のリビング」で過ごしませんか?

家族が集う、つながるリビングルームの作り方

リビングルームに家族がそろっても
“ただテレビを一緒に観ているだけ”、ということはありませんか。
家族それぞれが個室を持ち、
異なるライフスタイルを楽しむ時代だからこそ、
リビングルームでの家族の時間を大切にしたいですね。

家族が集う、つながる
リビングルームの作り方
家族のコミュニケーションを大切に
するリビングルームのインテリア
インタビューバックナンバー
今月の特集
リビングルームでの家族の楽しみをもっと広げるために、
どんなことを意識すればよいのでしょうか。
“家族の絆を強める家づくり”をテーマに、住まいの設計やリフォームを手がける、
建築家の横山彰人先生にうかがってみました。
建築家 横山彰人さん

プロフィール

“日本人に合った”リビングルームとは? リビングルームは、家族でもっと楽しめる

“日本人に合った”リビングルームとは?

日本のリビングルームのルーツは“食卓文化”

日本がアメリカの生活様式をお手本に「LDK」スタイルを取り入れたのは戦後のことです。それから50年あまり経ちますが、リビングルームでどんなふうに団らんの時間を送りたいのか、はっきりイメージできない方が意外に多いようですね。きっとそれは、本来日本人にとっての団らんの場が、囲炉裏端や茶の間などの食卓にあったからではないかと思うのです。事実、「LDK」という間取りの形式こそ定着したものの、リビングルームとダイニングルームがうまく使い分けられていないケースを多く目にするのです。
また、リビングルームは家族のためのものではなく、お客さまをもてなすためのもの、という考え方も強いようで、お客さまの目線を気にするあまり、リビングルームからはなるべく生活感を排除しようとする傾向もあるようです。

大切なのは、家族の“気配”を感じられること

かつての日本の住まいは、ふすまなどで部屋が仕切られていたため、部屋と部屋の境界があいまいで、空間はほぼ一続きのような形でした。しかし現代の住宅の多くは、それぞれの部屋が壁とドアで仕切られています。これによって家族のプライバシーが守られるようになった反面、家族の“気配”を感じにくくなってしまったといえるでしょう。
気配を感じるということは、日本人のコミュニケーションにおいて大変重要なものです。というのも、日本人は欧米人のように会話でコミュニケーションを築くのではなく、表情やしぐさなどで気持ちを察するといった非言語コミュニケーションが得意な民族であるため。だからこそ、言葉ではなく気配によって絆を深めてきたのです。
住まいにおいても、昔は「ふすまの向こうでおじいちゃんが寝ているから大きな声は出さない」とか、「子どもの咳が昨日よりひどいみたいだけれど大丈夫だろうか」などと、家族の気配を身近に感じ、そこから自然と家族への気遣いや思いやりが培われていったように思います。各部屋の独立性が高い現代の住まいでは、隣の部屋の気配を感じることが難しくなってしまいましたが、だからこそ、住む人が工夫をして、家族の気配が感じられるリビングルームを作っていくことが大切ではないでしょうか。

リビングルームは、家族でもっと楽しめる

リビングルームを“テレビの部屋”から多機能空間へ

個室化が進んだ現代の住まいにおいて、リビングルームは家族全員が集まれる数少ない空間。なので、まずは「リビングルームは家族の中心であり、住まいの“重心”となる場所」という意識を持っていただけたらと思います。ただ、現代のリビングルームの場合、どうしてもインテリアがテレビを中心とした配置になってしまう傾向が強く、そこがテレビを観るだけの空間になってしまいがちではないでしょうか。テレビを見る時間が長すぎると、それだけ家族が顔を見合わせ、対話をする時間が減ってしまいます。テレビ中心の空間にならないような工夫ができるといいのではないかと思います。
たとえば、テレビを隠せるような壁面収納やAVボードを取り入れてみてはいかがでしょうか。テレビを時に応じて隠せるようになると、「特に観たい番組はないけどつけてしまう」という行為が少し行いにくくなります。すると、なんとなくテレビをつけっ放し、という時間が減り、そのぶん家族の会話やコミュニケーションの機会が増えるかもしれません。
また、家族がそれぞれの個人的な時間をリビングルームで楽しめるような工夫をするのもおすすめです。趣味や勉強はそれぞれの個室で、という発想を変えて、リビングルームに家族共有のパソコンを置いたり、親子で一緒に勉強できるようなデスクスペースを設けてみたりしてはいかがでしょう。家族がそれぞれ思い思いの時間を過ごせるように、リビングルームを多機能化させていくような仕掛けを試みてください。

リビングのテレビは主役? vs 脇役?

リビングとテレビの関係について、みなさんと意見交換をしませんか?

今月の討論会はこちら

家族のコミュニケーションをより深める、インテリアの配置のポイント

家族のコミュニケーションが深まるリビングルームを作るためには、インテリアの配置における3つのポイントがあります。
  • 「たまり」を作る

    「たまり」とは、家族全員にとって居心地のいい、くつろげる場所を指します。「たまり」の作り方にはいろいろありますが、手軽な方法としては照明が挙げられるでしょう。全体照明の明るさを少し落とし、「たまり」を作りたい場所だけをスタンドライトやフロアライトなどで柔らかく照らせば、そこに自然と家族が集まりやすくなります。ソファも「たまり」になる場所ですが、対面型よりL字型の配置のほうが、家族のコミュニケーションが親密になりやすいでしょう。
  • 家族同士の「目線の交差」を意識する

    家族がコミュニケーションをとるためには、「目線の交差」も大切です。かつての囲炉裏や茶の間の食卓なども、お互いの目線が交差しやすいものでしたよね?
    私のところへ来られる方のなかには、「家族が一緒の部屋にいるのに、なんとなく心が通じ合わない気がする」といったご相談をされる方もいらっしゃいます。
    そうした場合にご自宅を拝見すると、リビングルームで家族の目線が一切交わらないようなレイアウトになっていることも多いのです。たとえば、お子さんはテレビゲームをし、ご主人はソファで読書をし、そのご主人に背を向ける方向で奥様がパソコンをしている、といったような。これでは目線がいっさい交わらず、同じ部屋にいたとしても、コミュニケーションが取れていることにはなりません。家族の居場所が死角にならないよう、レイアウトを考えることも大切でしょう。
  • 家族が共有できる情報を形にする

    「これがあれば家族が必ず引き止められる」というアイテムをリビングルームに置いておくことも有効なアイデアです。家族のスケジュール表や、見たい番組に印をつけたテレビ表、お子さんの絵、家族旅行の写真や土産品…。そうしたものをリビングルームに並べていくことで、家族が共有できる話題が膨らみ、会話も弾みやすくなるのではと思います。

住まいの先輩のリビングは?

マリナーゼおばさん さん

パソコンデスクに主人が向かい、子供はダイニングで宿題をし、私はリビングで読書という個人個人の場所がひとつの空間に収まっています。
互いに気配を感じながら、それでも十分に離れており、適度な距離を保て、理想のLDになりました。

キキ さん

子供がピアノを習い始め、小学校入学を控えた時に、リビングと隣の個室との界壁に、大きな室内窓をつけました。
低学年では「学習机を買っても、結局ダイニングテーブルで勉強をすることになる」と言う話をよく聞きますが、その大きな開口部によって、かつての個室が、家族全員が机に向かったり音楽を楽むためのセカンドリビングになりました。

リビングルームは、使い方の発想を少し転換するだけで、家族の時間が一段と楽しいものに変わりそうですね。家族の気配を感じるリビングルーム作り。小さな工夫は今日から実践できそうです。

横山彰人 Name:
横山彰人(よこやま あきと)
Profile:
建築家。小崎喜昭建築設計事務所を経て、一級建築士事務所・横山彰人建築設計事務所主宰。住宅建築・リフォームを手がけるほか住宅相談室を開設し、学校、PTA、教育関係やメーカーへの講演など、住まいに関するさまざまなアドバイスをしている。
ホームページ:http://www.akito-y.com/
おもな著書:
『危ない間取り』(新潮社)
『子供をゆがませる「間取り」』(情報センター出版局)
『建築家となら望みどおりの家が建つ』(山海堂)
『リフォームの実例とヒントの辞典』(成美堂出版、監修)
『夫婦をゆがめる「間取り」』(PHP研究所)
次は、家族のコミュニケーションを考えたインテリアの選び方について、インテリアショップの「IDEE」にお話をうかがいます。 家族のコミュニケーションを大切にするリビングルームのインテリア

ページTOP