vol.038 “窓辺”で、素敵な時間を過ごしませんか
窓辺という空間の可能性

開けたり閉めたり眺めたり。
普段、住まいの窓の存在を意識することはあまりないかも知れません。
でも、通風・採光など、生活に必要不可欠なものを住まいに取り入れたり、
外から見れば、建物の外観の印象を左右したりもする、
住まいにとってはとても大事な存在です。
今回お話をうかがったのは、マンションなどの集合住宅のデザインや、
東京国際空港(羽田)第二旅客ターミナルビルなど、
大規模建築のデザインも数多く手がけられている建築家の光井純さん。
窓についての基本的な機能や、デザインに込められた思いを伺いました。

パークシティ浜田山 [モデルルーム]

建築家が考える窓

光井さんは建築家という立場から、窓というものをどのように捉えていますか?

まずは、窓がそもそも暮らしのなかでどんな意味を持つものなのか、簡単にお話しましょう。
窓が持つ機能は、建物の内側から見るか、それとも外側から見るかで考え方が変わってきます。建物の内側にいる人にとっては採光や通風、そしてもちろん外を眺めるという役割も挙げられます。反対に、建物の外側にいる人からしてみれば、建物の内側を垣間見ることのできる場所だといえます。このように窓には、、内側と外側、双方向に役割が備わっているといえます。

闇に光を照らす、西洋の窓

闇に光を照らす、西洋の窓

一枚の絵としての窓

それでは、窓の内側と外側、それぞれについて窓の役割をお伺いします。
まず、屋内から外を見るときの窓の役割については、どのようにお考えですか?

では西洋と日本、それぞれの伝統建築における窓の違いについて触れてみましょう。
伝統的な西洋建築の構造は、基本的には壁で囲まれたシェルターのように作られていて、窓はその壁をくり抜いたかのようにしつらえてあります。もちろん、実際には窓はくり抜かれているわけではありませんが、構造上、小さな開口部であることが多いといえるでしょう。
一方、日本の伝統建築を見てみると、梁と柱だけで構造部分が作られていますから、ふすまや障子を取っ払ってしまうとまったく壁のない状態になります。そのため、大きな開口部をいかに閉じていくかという発想で、窓が作られているといえるのです。

なるほど。壁をくり抜く考え方と、開いた場所を閉じていく考え方、西洋と日本の窓のつくりは建築上全く逆の考え方のようですね。

西洋建築において、小窓から室内にこぼれてくる光というのは、壁に囲まれた闇の空間を照らすものとして、大変ありがたがられていた存在だっただろうと想像できます。ヨーロッパの教会建築などでよく見られるバラ窓は、そうした光のありがたさを神々しい存在にまで高めていく仕掛けだったのでしょうね。
また、ヨーロッパは緯度が高く、日照時間も少ないために、光に乏しいという地域性があります。そのため、窓辺を少しでも明るく見せるために、カーテンをはじめとするウィンドウトリートメントという文化が発展しました。窓を“一枚の絵”と考えた場合、ウィンドウトリートメントとはその額縁を彩る文化だといえるでしょう。こうした文化は、日本では見ることのできないものです。
伝統的な日本の建築の場合、窓の役割のひとつに“自然の景色を楽しむ”というものがありました。だからこそ、大きく開かれた開口部から見渡せる美しい景色を、障子やふすまなどを使って“切り取っていく”という文化が発達していったのでしょう。
例えば日本には「雪見障子」と呼ばれるものがあります。これは、地面の近くの風景だけを切り取って眺めることのできる障子で、雪がしんしんと降り積もっていく情景を楽しむための仕掛けです。こうした、窓の風景を切り取るという発想は、じつは日本でしか見ることができません。全体を見るよりも、一部を切り取る方がより美しい眺めになるという、日本独特の美意識から来るものなのでしょう。
このように、部屋の内側から眺める窓は、“一枚の絵”にたとえることができると思うのですが、西洋ではその額縁の装飾が発展していったのに対し、日本の場合は絵の構図にこだわる文化が発展していったといえるわけです。

開口部が広い、日本の窓

開口部が広い、日本の窓

現代の建築を見ると、どちらの様式ともいえない窓ですね。

現代建築ではむしろ、西洋的な発想と日本的な発想の両方が求められているといえるでしょう。昔と違って技術的な制約もありませんから、西洋的な窓の考えと日本的な窓の考えを融合させることは難しくなくなっています。
そうなると、われわれ建築家が考えなければならないのは、窓そのもののデザインだけではなく、「この窓辺でどんな暮らしが営まれるのか」「どんなドラマが生まれるのか」といった、“窓辺”での生活風景ではないかと思うんです。光が差す明るい窓辺には、家族や友人が自然と集まってくるもの。そこでどんな対話が生まれるのか、といったことをイメージすることが、窓をデザインする上で一番大切なことではないかなと考えているんです。

住む人の“生活の気配”を表現する窓

それでは、建物の外から見る窓には、どんな役割があるでしょうか?

さきほど、窓は建物の内側を垣間見ることのできる場所だといいましたが、住まいの外側から見たときに、窓はその家の住人の“生活の気配”を感じさせるものだと思うんです。
例えば窓辺にちょっとしたテーブルスペースがあれば、そこに植物や置き物などを飾ったりしますよね。また、そうした飾りが季節によって変わったりもすると思います。桃の節句には雛飾りが置かれていたり、クリスマスにはツリーが光っていたり。すると窓辺には、住む人々の心づかいが表れてきて、通りがかった人は「この家には花が好きな人が住んでいるんだな」とか「小さなお子さんがいるのかな」などと、そこで営まれている暮らしぶりを想像することができます。いうなれば窓とは、建物の内側の暮らしを外へと伝える“メッセンジャー”なのではないでしょうか。
もっといえば、窓から垣間見える“生活の気配”は、安全な街を作るものです。というのも、窓辺が豊かに演出された建物に囲まれている街は、いつも誰かの視線を感じるような印象を与えるからです。このように、セキュリティの面でも大きな意味があるといえるでしょう。

では、建物全体の外観デザインを考える場合、窓とはどういった存在ですか?

建築物の外観を顔とするならば、“生活の気配”を感じさせる窓とはその建築物のアイデンティティを映し出す目のような存在。目は人間の顔の中でもっとも感情が表れやすい部位ですが、窓もまた、建築物の表情をもっともよく表わすものだといえるのです。建築のなかのあらゆるパーツの中で、もっともメッセージ性の高い場所が窓だともいえるでしょうね。だからこそ、建築家の想いも窓のデザインによく表れてくるものなのです。

パークシティ浜田山 [モデルルーム]

パークシティ浜田山(物件サイトへ) [モデルルーム]

すると、住まいを検討する際には、窓のデザインをじっくりとチェックすることもひとつのポイントになるのかもしれませんね。

窓には縦長のものや横長のもの、丸窓、アーチ窓、出窓といったようにさまざまな形がありますし、開閉様式にも2枚の窓を水平方向に開閉する「引き違い窓」や上下に窓を動かして開閉する「上げ下げ窓」、観音開きに開く「両開き窓」に窓が回転して開閉する「中軸回転窓」など、さまざまなものが存在します。加えて窓台や庇、格子などにもさまざまなデザインのものがあり、その一つひとつが、建築家の意図によってデザインされ、窓辺という空間を構成している要素なので、これらにもぜひ注目して住まいを選んでいただけたら、と思います。
モデルルームなどに行かれる際はぜひ、そうした窓のエレメントをじっくりと観察しながら、「ここに住んだら、この窓辺でどんな時間が過ぎていくのだろう」と、イメージをふくらませてみてください。もし、そこで楽しい時間をイメージしていただけたなら、建築家の想いがその人の心に通じたということだろうと思いますし、逆に何のイメージもしていただけなかったとなると、それは建築家のほうの負け、となるかもしれませんね(笑)。

「パーク・ハイム山手の杜」(販売済)の雁行する窓
「パークコート赤坂ザ タワー」(物件サイトへ)完成
予想CG

上)「パーク・ハイム山手の杜」(販売済)の雁行する窓

下)「パークコート赤坂ザ タワー」(物件サイトへ)
  完成予想CG

窓辺という空間が持つ魅力、それは人が自然と集まる“縁側機能”

マンションの窓を設計する場合、中低層と高層ではどういった違いがあるのですか?

中低層の場合、地面からの距離が近い分、窓がよく見えるわけですから、細かい配慮と工夫が必要だと考えています。例えば「パーク・ハイム山手の杜」の“雁行する窓”は、道に面した窓がジグザグ雁行するデザインになっています。とこうすることで、それぞれの窓には直角のコーナーが生まれるのですが、このコーナー部の正面には木を植えて、目隠しを作りました。目隠しといっても木が1本立っているだけですから、中からはほどよく外も見渡せるし、道を通る人々の様子もよくわかる。窓から道を通る人に声をかけることもできて、対話が生まれやすい設計になったと思っています。
また「パークシティ浜田山」では、窓から“生活の気配”が感じられるようなデザインを徹底的に追求しました。ベイウィンドウ(台形に張り出した出窓)を多く取り入れているのが特徴で、窓台は200mmと少し低めに作っています。こうすると、窓台が高い出窓に比べて、住む人びとの“生活の気配”が一層いきいきと窓の外に表れるのではないかと考えたのです。また、ベイウィンドウそのものも、建物の外観に豊かな表情を与えてくれます。

高層のマンションの窓になると、考え方が違ってきそうですね。

高層マンションの場合、プライバシーが確保されていますから、窓は視覚的に開け広げられた状態です。開口部の大きさという点では、昔ながらの日本家屋の窓に存在感が似ているかも知れませんね。
その窓に広がる景色は、青い空だったり、遠くの山だったり、都会の夜景だったりするわけですが、その美しい眺望は家族や仲間を引き寄せて、ワイワイと楽しいひとときを演出するには十分な存在だといえるでしょう。高層マンションの窓は、いい換えれば“都会の縁側”なのかもしれません。

光井純さん

“都会の縁側”と呼ぶと、なんだか懐かしい雰囲気が加わりますね。

私は、あらゆる窓には“縁側機能”というものがあると思っています。昔の日本の住宅の多くには縁側があったわけですが、そこには家族が集まり、隣人が茶飲み話をしに立ち寄ったりしていました。縁側は室内でありながらも、外の自然と接することのできる場所だったので、人が集まりやすいんですよね。窓辺にもやはり、縁側のように人が集まりやすい特徴があると思うんです。窓辺でのひとときをより楽しいものにしたいと考えるなら、その“縁側機能”を高められるような仕掛けを作ってみてはいかがでしょう。
例えば窓際に本棚を置いて、すぐそばに机も置いておく。すると子どもたちが集まってきて、本を読んだり、調べ物をしたりといったことが自然と行われます。こんなふうに、、人が集まって、そこで何かを楽しめるような工夫が窓辺に施されると楽しくなりそうですよね。そうすればお隣さんなんかも気軽に遊びに来たりして、活気のあるコミュニティが形成されていくのではないかと思います。窓辺の“縁側機能”が高まれば高まるほど、生活にはより多くのふれあいが生まれることでしょうね。

Name:
光井純
Profile:

 

光井純アンドアソシエーツ建築設計事務所株式会社、ペリー クラーク ペリー アーキテクツジャパン株式会社代表。 日米両国において建築士資格を有し、米国建築家協会日本支部の役員も務めている。米国建築家協会(AIA)、日本建築学会、日本建築家協会会員。

主な作品に、東京国際空港(羽田)第二旅客ターミナルビル、NTT新宿本社ビルほか。コネチカット州AIA賞、グッドデザイン賞、公共の色彩賞ほか、受賞多数。

窓辺の“縁側機能”。光井さんは、この、窓辺が持つ魅力と新たな可能性をこれからも探って行きたい、と話されていました。次の2本の特集では、窓辺をより魅力的な空間にするための実践的なアイデアをご紹介していきます。

窓辺に表情をつくる「ウィンドウトリートメント」 窓辺に広がりと奥行きを持たせるグリーンコーディネート術

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