vol.037「住まいをめぐる出逢い」
「この住まいでの30年は、私の人生をいきいきしたものに変えてくれました」住まいの先輩・パパゲーナさんのお宅を訪ねて

マンション管理組合の理事を務めたことで
多くの社会勉強や豊かな経験ができました――
「住まいの先輩に聞きました」で、そうお答えくださったパパゲーナさん。
ご購入されてから30年近く経つというお住まいを通じて
理事のお仕事をはじめ、どのようなご経験を積み重ねてこられたのでしょう。
訪ねた場所は、都心にほど近い静かな街にあるお宅。
住まいを購入されたことで生まれたというさまざまな変化、
さまざまな出逢いについて、おうかがいしてみました。

暮らしのプロの声スペシャルインタビュー
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住まいの先輩インタビュー
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住まいの先輩インタビュー
この住まいでの30年は、私の人生を
いきいきしたものに変えてくれました
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パパゲーナさんのプロフィール詳細とご回答集

住まいの先輩に聞きました

自由な空間で解き放たれた心そして湧きあがる創造力

パパゲーナさんがこの住まいを選ばれた理由は何だったのでしょうか。

なんといっても都心に近いことです。夫はもちろん、私がライターの仕事をしていたこともありましたので、仕事先に出向くうえでとても便がいいんです。また、カフェやデパートが近くにありますし、大好きな美術やクラシック音楽などを鑑賞することも、美術館やコンサートホールなどへのアクセスがいいので気軽に行けますよね。住居だけではなく、そうしたすべてが自分の生活空間になるという点にも魅力を感じて、この家を購入することを決めたんです。

都心に近いこのお宅に住まわれてから、ご自身の中でなにか変化はありましたか?

はい。一番の変化は“自由”を楽しむことができるようになったことですね。新しい住まいを手に入れたことがきっかけで美術や芸術といった文化に触れる機会も増え、自分ひとりの時間がそれまでよりも充実したものになりましたので、精神的な解放感を得られたように思うんです。そのことで大きく影響を受けたのが、自分自身の仕事です。それまでもライターの仕事はしていましたが、作品といったものを作っていたわけではなかったですし、自分がクリエイティブな仕事をできるなどとも思っていませんでした。ところが、ここへ移り住んだころから、自然とクリエイティブな作品を作っていけるようになったんです。当時は40歳を過ぎたときで、更年期障害が重いころでもあったのですが、そんな辛い時期だったにもかかわらず、それまででもっとも自由に、夢中になって作品に取り組んでいました。

「パパゲーナとは、モーツアルトの歌劇『魔笛』に登場する人物です。はじめは70代の老婆。でもそれは化けの皮で、脱ぐと17歳の元気で可愛いパパゲーナがあらわれ、めでたくパパゲーノと結ばれます。17歳の元気で感動する心と、70歳の智恵をもつこと。それが女の理想像なのでは?」

暖かい季節が待ち通しい時季にうかがいましたが、お部屋にはもう春が来ているようでした。

パパゲーナさんが手がけられた出版作品の数々。絵本、フォトエッセイ、詩集と、その分野は多岐にわたります。

どのような作品を手がけられるようになったのですか?

もともと絵を描いていまして、あるとき展覧会に出品しないかというお話がありました。それで作品を出しましたら、版画の公募団体の方がたまたまご覧になって、「版画作品を作ってみてはどうか」と、熱心にすすめてくださったんです。それで版画の講習会を2週間受けて、作品を応募してみましたら入選したんですね。
その後、ある作品が紹介された記事か何かをご覧になった編集者の方が、「絵本を描いてみませんか」とお電話くださって。そんなことが、ここに住んで2、3年経ったころに起こったんです。それがきっかけで、5冊の絵本を出させていただいたんです。

素敵な版画ですよね。添えられている言葉も、ひと言なんだけれどすごく味があって。

そのひと言は、ライターをやっていた経験が生きているのかなと思いますね。
絵本以外にも、江戸小紋の型紙をつかったコラージュなども作るようになりました。江戸小紋はこのあたりの特産品なんですが、近くに江戸小紋の工房があって、そこから染めに使った型紙を頂戴することができたので、それを使ってコラージュを始めたんですよ。
ほかにも、自分で撮影した写真と俳句を組み合わせたフォト俳句を楽しんでいますし、ジャム作りも趣味にしています。こうした“何かを作る楽しさ”に目覚めたのは、まさにこの30年のこと。ここに移り住んでから、すべて始まったんです。

「苦手なことをやるなら今」と、自分に課題を課すつもりで受けた管理組合の仕事

パパゲーナさんは、マンションの管理組合の理事長もされているそうですね。どのような経緯で引き受けられたのですか。

ここに住み始めて数年たったころです。「ライターをやっているなら理事会報告などの文書作成を手伝ってくれませんか」と、理事会に引っ張り込まれて(笑)。それが管理組合の仕事に関わるきっかけでした。それ以来、自分の大切な住まいのことですから、いろいろな仕事に携わらせていただいてましたが、去年(2007年)になって「ぜひ理事長に」と。毎日2時間も説得されてしまいまして。

それだけ住民の方々のまとめ役として望まれていたのですね。

当初は、丁重にお断りしていたんですけれど(笑)。でも、何回目かに来られたときに、「待てよ」と思い直したんです。私はこれまで「長」のつくものは級長もやったことがなかったし、ライターしてフリーランスで仕事してきて、組織の大変さも知る機会がなかったな・・・と。そして、苦手なことをやるなら今だと思ったんです。それで、最終的にはお引き受けしたんですよ。
実際に携わってみると、外部の業者さんとの交渉もしなければなりませんし、住民の方々に対して、さまざまなスケジュールを調整して発表しなければならない。本当に大変な仕事なんです。

印象的な言葉が添えられた版画作品。

江戸小紋の型紙を利用したコラージュ。

ご自身で写真を撮り、そこに一句を添えるフォト俳句。

季節の果物で作られたジャムは、優しい甘さ。

すべてパパゲーナさんの素晴らしいアート作品です。

創作活動のかたわらでそうした大役をお勤めになるというのは、さぞご多忙なのではないでしょうか。

大変ではありますが、学ぶことも多かったんですよ。「肝胆相照らす」といいますけれど、理事や理事長といった役を務めなければできなかった大切なお友達にも出逢えましたし。この年齢になって、組織の中でみんなの意見を聞いてまとめるという、それまで経験したことのない作業に取り組むことができて、新鮮でした。苦手なものから逃げてしまう人生になってしまってはいやだと、前向きに挑戦してきましたが、おかげでこれまで以上にいきいきとした気持ちでいられるようになった気がします。

私の思う“理想の住まい”。それは、自分のだけの空間で自由に過ごすこと

世界各地のアンティークスプーンは、芸術品そのもの。

金属枠にエナメルを焼きつける「プリカジュール」という手法でつくられた逸品。1893年に作られたものだそう。ステンドグラスを思わせる美しさです。

お住まいの中で、こだわりの場所やお気に入りのモノがあれば教えてください。

まず、この外の環境ですね。居間から眺めることのできる公園の借景がとにかく気に入っているんです。春には窓一面が桜で埋め尽くされますし、ウグイスのかわいらしいさえずりを聴くこともできます。でも、このマンションのどこからでも、この借景が楽しめるわけじゃないと思うんです。わが家は3階なんですが、この高さだからこそ、桜の木々を近くから見下ろすことができるわけです。もう少し高い階になると桜の景色が小さくなってしまいますし、ここより低い階だと桜の木が近すぎてしまうんじゃないかと思うんですよ。それに、ウグイスの鳴き声も、うちよりちょっと上のお宅では聞こえないそうなんです。それくらい、わが家から見えるこの借景は貴重なものなんだと自負しています(笑)。この借景をめでることができる限り、ここに住み続けたいと思っています。
気に入っているモノでいうと、アンティークスプーンのコレクションでしょうか。30年ぐらいかけて、少しずつ集めているんですよ。

見たこともない模様や形のスプーンばかりで、どれも美しいですね。貴重そうなものばかりですが、いつごろから集められているのですか。

出会いは30代はじめころでした。なかには19世紀のものもあり、使った人々の営みや歴史を想像する楽しさがあります。ただ、これらのコレクションは普段は部屋に飾ったりしていないんですよ。箱の中に、大切にしまっているんです。本当に大切なものは隠しておきたいじゃないですか(笑)。
暮らしの空間で一番気に入っているのは、やはり自分の部屋かもしれません。仕事道具であるパソコンがあったり、版画やコラージュをするときの創作道具を揃えて置いたりしているスペースです。ささやかではありますが、ここは私だけの空間。雑然とはしていますが、ここなら私は自由に、創作活動に没頭できるんです。そんなときは、心から幸せな気分になれますね。

自由な創造ができる空間、それがパパゲーナさんにとって理想のお住まいなのですね。

本当にそうですね。インテリアを工夫したり、つねに美しく整えることも住まいの楽しさですが、私にとっては自分だけの空間で好きなように、自由に過ごすことが理想の住まい方かもしれません。これからも今の暮らしを楽しみながら、いい作品を生み出していきたいと思っています。

この仕事部屋では「時間を忘れて作品づくりに没頭してしまう」とパパゲーナさん。自由を満喫できる創造空間なのです。

版画、コラージュ、フォト俳句、ジャムづくりと、創造の羽根をめいっぱいに広げて作品を生み出し続けるパパゲーナさん。クリエイティブな活動を支えているのは、心を自由に解き放つ住まいの存在かもしれません。これからも、パパゲーナさんの素敵な作品を楽しみにしています。

「自然あふれる住まいには、のびのびした家族の時間が流れています」

特集「住まいをめぐる出逢い 後編」

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