映画に出てくるインテリアは確かに個性的だったり、印象的だったりしますね。
映画はすごく参考になります。たとえどんなにストーリーがつまらない映画でも、インテリアに関してはどこかに見所があるもの。ありきたりのような西部劇の映画だって、開拓民の家のテーブルに、カゴがあってリンゴが入っている。それがセザンヌか何かのような、美しい1枚の絵になっていたりすることがあるのですね。そんな視点で映画を鑑賞してみるのも、とても楽しいのではないでしょうか。
セザンヌのお話が出ましたが、絵画からインテリアのインスピレーションを得ることもあるのですか?
ええ。私のインテリアを見ていただくとおわかりかと思うのですが、私、女性の裸体のモチーフが大好きなんですよ。なぜ好きなのか、はっきり理由を説明できるわけではないのですけれど、しいていえば画家のマティスが好きだからかもしれませんね。マティスって裸体の絵も多く、色彩もすごく豊か。同時代に生きていたら恋していたかもしれないかと思うくらい、マティスの絵が大好きなんです。その想いがインテリアにも生きているのではないかしら。そんなふうに、好きなアートのエッセンスをインテリアに取り入れるのも、その人らしさがにじみ出てくるひとつの要素です。
ツァイさんはさまざまな国々に旅をされていますが、旅先でご覧になったものや出来事などがインテリアに生かされることはありましたか?
やはり、ホテルのインテリアはすごく参考になります。特に一流ホテルのロビーやレストランや客室のインテリアには学ぶことがたくさんあります。 ずっと以前、まだ主人がニューヨークの大学に通っていた頃のことですが、ニューヨークのロングアイランドにある小さな宿に泊まったときに、ベッドの枕元のテーブルに真っ赤なリンゴが5個、いつでも食べてくださいというようにお皿に盛ってありました。シンプルな室内にリンゴがあるだけで、見た目にも鮮やかでみずみずしく、宿主の心遣いも感じられ素敵なことだなと強い印象をうけたことを、今でもはっきり覚えています。私も室内に季節の果物を置き、目にも香りも楽しめますし、ゲストルームでも、いつでも食べていただけるようご用意しています。 そんなふうに、何気なく飾られたリンゴの美しさに気づけるかどうか、というのが大切なことなのかもしれませんね。
そうそう。ものの見方というのは、どこに焦点を合わせるのかによってずいぶんと変わってしまうものなのです。ぼんやり見ているだけでは、どこへ行っても何をしても、何かを発見することなどできませんからね。それでは「○○に行ってきた」という、ただそれだけのことになってしまいます。逆にいえば、しっかりと焦点を合わせていろんなものを見ていれば、旅に行かなくても素敵な発見はできるもの。そうした発見の積み重ねが、“その人流”と呼べるインテリアスタイルを作り上げることにもつながっていくのだと思います。 |