vol.037「住まいをめぐる出逢い」
暮らしのプロの声スペシャルインタビュー 自分らしい住まいに出逢う
既成の枠にとらわれない、独自の美学を持つツァイ・ヨシコさん。そのルーツを辿れば、“自分らしい住まい”を作るヒントが見えてくるのではないでしょうか。今回、都内にあるご自宅のマンションを訪ね、あらためてお話をうかがってみました。
暮らしのプロの声スペシャルインタビュー
自分らしい住まいに出逢う
住まいの先輩インタビュー
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この住まいでの30年は、私の人生を
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Part1 “自分らしさ”を表現するインテリアとは Part2 “自分流”の住まいと出逢うために

西洋的のようでもありながら東洋的な雰囲気も感じられ、アンティークの風情を感じさせるのに現代的なアートも融合している、独特のインテリア。
まずはじめに、ツァイさんのそのスタイルはどのように培われていったのか、どうすれば独自性のあるインテリアを作っていけるのかをうかがってみました。

ヨシコ流と呼ばれるインテリアの美学。そのルーツとは
好きな映画や絵画から、インテリアのインスピレーションを感じ取る

ツァイさんのインテリアには、「・・・風」という型にはめることのできない独自のこだわりを感じられます。そうしたこだわりは、いつごろから持たれるようになったのですか?

私は幼いころ、群馬県の祖母の家で育てられたのですが、私のインテリアに対する考え方は、その祖母が実践していた暮らし方に影響を受けている部分がとても大きいと思っています。例えば、春から夏へと季節が移ろいそうな予感がするころに、学校から帰ってきたら障子が夏障子に変わっていたりしていました。すると子ども心に、家の中が涼やかになったわ、と感じていたのです。そうした経験が、インテリアに興味を持つようになったきっかけだったと思います。

幼少のころから、素敵なインテリアを実践されている先輩が身近にいらっしゃったわけですね。

そうですね。祖母だけでなく、父からの影響もありました。父は当時としては珍しく、西洋文化に通じていた人だったのですが、その父に連れられてよく映画館に行っていました。ゲーリー・クーパーやクラーク・ゲーブルなどが出ていた洋画です。「摩天楼」だとかですね。そのころの私は幼くて、お話はまったくわからなかったのですけれど、映画に出てくるインテリアに強烈に惹きつけられたのは覚えています。「アメリカのお家はこうなっているのだ、すごいなあ」って。映画を観た翌日は、映画をまねてフォークとナイフで食事をしてみたり。食べているものは干物のお魚だったりするのですけれどね(笑)。そんな、映画のまねごとなんかをしながら、「あんなインテリアで生活してみたいな」なんて思っていました。

上)ツァイさんの都内のご自宅。週末はここでお仕事をされています。

下)バーのようなキッチン。ツァイさんの好きな裸体のモチーフが飾られています。

映画に出てくるインテリアは確かに個性的だったり、印象的だったりしますね。

映画はすごく参考になります。たとえどんなにストーリーがつまらない映画でも、インテリアに関してはどこかに見所があるもの。ありきたりのような西部劇の映画だって、開拓民の家のテーブルに、カゴがあってリンゴが入っている。それがセザンヌか何かのような、美しい1枚の絵になっていたりすることがあるのですね。そんな視点で映画を鑑賞してみるのも、とても楽しいのではないでしょうか。

セザンヌのお話が出ましたが、絵画からインテリアのインスピレーションを得ることもあるのですか?

ええ。私のインテリアを見ていただくとおわかりかと思うのですが、私、女性の裸体のモチーフが大好きなんですよ。なぜ好きなのか、はっきり理由を説明できるわけではないのですけれど、しいていえば画家のマティスが好きだからかもしれませんね。マティスって裸体の絵も多く、色彩もすごく豊か。同時代に生きていたら恋していたかもしれないかと思うくらい、マティスの絵が大好きなんです。その想いがインテリアにも生きているのではないかしら。そんなふうに、好きなアートのエッセンスをインテリアに取り入れるのも、その人らしさがにじみ出てくるひとつの要素です。

旅先での出逢いも、インテリアの大切なヒントに

ツァイさんはさまざまな国々に旅をされていますが、旅先でご覧になったものや出来事などがインテリアに生かされることはありましたか?

やはり、ホテルのインテリアはすごく参考になります。特に一流ホテルのロビーやレストランや客室のインテリアには学ぶことがたくさんあります。
ずっと以前、まだ主人がニューヨークの大学に通っていた頃のことですが、ニューヨークのロングアイランドにある小さな宿に泊まったときに、ベッドの枕元のテーブルに真っ赤なリンゴが5個、いつでも食べてくださいというようにお皿に盛ってありました。シンプルな室内にリンゴがあるだけで、見た目にも鮮やかでみずみずしく、宿主の心遣いも感じられ素敵なことだなと強い印象をうけたことを、今でもはっきり覚えています。私も室内に季節の果物を置き、目にも香りも楽しめますし、ゲストルームでも、いつでも食べていただけるようご用意しています。

そんなふうに、何気なく飾られたリンゴの美しさに気づけるかどうか、というのが大切なことなのかもしれませんね。

そうそう。ものの見方というのは、どこに焦点を合わせるのかによってずいぶんと変わってしまうものなのです。ぼんやり見ているだけでは、どこへ行っても何をしても、何かを発見することなどできませんからね。それでは「○○に行ってきた」という、ただそれだけのことになってしまいます。逆にいえば、しっかりと焦点を合わせていろんなものを見ていれば、旅に行かなくても素敵な発見はできるもの。そうした発見の積み重ねが、“その人流”と呼べるインテリアスタイルを作り上げることにもつながっていくのだと思います。

お仕着せではない、住まいの“自分ブランド”を作る
“自分ブランド”−それは、あせらずに時間をかけて作り上げるもの

ツァイさんのように、自分らしくこだわってインテリアを作り上げるためにはどうしたらいいのでしょう。

最初から“自分らしさ”をうまく表現しようとしても、なかなかうまく行きませんよね。誰でもはじめはそんな感じじゃないかと思います。だいたい、“自分らしさ”とは一体どういうものなのか、なかなかわからないものじゃありませんか?私の場合も、インテリアの仕事を20年続けていますけれど、いまだに「私らしさって何なのかしら?」って思うことがありますから。ですから、1〜2年程度では「自分らしさ」なんて早々出てこないものだと思っていいのではないでしょうか。あせらずに、時間をかけて探していくものなのではと思います。

なるほど。あせって“自分らしさ”を追求しようとしても仕方がないのですね。

そうです。“自分らしさ”がしっかりとした形になるまでには、ああでもない、こうでもないといった試行錯誤がともなうものなのです。例えばお店で何か小物を見かけて、妙に気に入って買ってしまうこと、ありますよね。でも、それを家に持って帰ってみると、どこに置いたらいいのか、いまいちピンと来ないなんてことも。そんなときは物置き行きになってしまうかもしれませんが(笑)、頭の片隅にはその小物のことをとどめておくのです。すると、あるときに違う何かを見つけて買ったときに、「あれと一緒に飾ったらいいかも」なんてひらめいたりするのですよ。

鳥かごは東洋的な雰囲気のものがお好きだとか。香港などでお買い求めになられるそうです。

自分がいいなと思うものを、根気よく探し続けることが大切ということですか?

そうなんです。妙に心惹かれるなあというものが増えてくると、それらが持っている共通点がわかってきます。それがその人らしさにつながっていくわけですね。ただ「このブランドが好き」といって、そのブランドの新しいものを買うだけだったりすると、“自分らしさ”にはなかなかたどり着けません。少々の出費を覚悟してでも、自分の目でものを選ぶ意識を持ち続けていれば、“自分流”のインテリアを見つけることができるだろうと思います。

ツァイさんご自身にとって、小物などをそろえるうえで“自分らしさ”を感じられる共通点とは何なのでしょう。

特徴的なことを挙げますと、生き物の気配を感じられるということでしょうか。私は鳥かごを飾るのが大好きで、いくつも下げたり置いたりしていますが、その中に鳥がいるわけじゃないのですね。ただ、何となく鳥の鳴き声が聞こえてきそうな気配は感じられるでしょう?
ほかにも、ネコやトカゲ、ヘビ、カエルといった動物をモチーフにしたものも大好きで、いろいろ探しては集めているのです。それらは一つひとつ比べてみると、トーンがまちまちのようにも見えるのですが、私というフィルターを通して集められていることによってまとまっているんです。これらはすべて、私が気に入って集めてきた“ヨシコブランド”のもの、というわけ。そういう“自分ブランド”を作ろう、という感覚で、インテリアを楽しんでみてほしいですね。

Part2 “自分流”の住まいと出逢うために

特集「住まいをめぐる出逢い 後編」

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