vol.037「住まいをめぐる出逢い」
“住まい”の変化は、人生観の変化。そこから広がった新しいキャリアとの出逢い 住まいの先輩・kimikoさんのご自宅を訪ねて

遥か遠方に富士山を望む閑静な住宅地に、
kimikoさんご一家が移り住んで約30年。
産声をあげたばかりの街が、新しい歴史を刻むその充実感を味わったkimikoさんは、
かけがえのない住まいを拠点に、次々と貴重な出逢いを体験されたといいます。
多くの仲間との出逢い、そして思いもよらない新しい自分との出逢い――。
kimikoさんの彩り豊かな人生のドラマにはいつでも、それを支え、
温かく見守っていてくれる、かけがえのない“住まい”がありました。

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新しい街の、新しいつながり

kimikoさんは、この場所に住まいを移されて約30年になるそうですね。

そうですね。当時は、主人の転勤先から首都圏に戻ったばかりで、ここから近い一戸建ての借り上げ社宅に住んでおりました。家を購入する予定はまったくなかったのですが、たまたま販売事務所の前を通りかかり、何気なく入ってみましたら、販売員の方がとてもていねいに対応して下さり、資金を試算して一言、「ご購入できますね」と言ってくださったのです。それはもう、驚きましたね。当時広い庭付きの一戸建てなど高嶺の花だと思っていましたから。とても嬉しかったことを覚えております。

ご購入を決められたときは、このあたりはどのような様子だったのですか?

はい、そのころはまだ家もまばらで、砂ぼこりが立っているような状況でした。当時は抽選で、ようやく当たったと思ったら山の上のほうにある土地で、当初、不便ではないかと心配しました。でも、販売員の方が「ここは将来、とてもいい場所になります」とおっしゃって。まさにその通りになりました。総戸数約1200戸、整備が進むにつれて、美しく、素晴らしい街並みになっていきましたから。街の将来や、私たち住民の生涯を見据えて開発された場所だったからなのでしょうね。ちょっと背伸びをしても、この街でこの家を購入してよかったと実感おります。

上)美しく手入れの行き届いたお宅です。
下)この街からは、見事な富士山を一望することができます。

この土地に移ってきた当時のことを語る、kimikoさん。

先ほど住宅街を歩いたのですが、富士山が見事に一望できますね。

美しい風景も、この街の財産のひとつですね。息子がまだ小学生で野山を駆け回って遊んでいたころ、「ママ、ちょっと来て」と私を高台まで連れ出したことがありました。「あれ、もしかして富士山?」と息子に教えられて驚きました。この土地で富士を眺望できる風景と初めて出逢えたのです。驚いたと同時にとても嬉しかったですね。

豊かな自然に囲まれたこのお住まいは、子育てにも理想的な環境だったのではないでしょうか。

自然環境はもちろんですが、開発の一環として幼稚園、小学校、中学校が新たに建てられたことも大きいですね。小学校の開校にあたっては、たまたまお役回りで、皆さんと校名を考えたり、通学路を決めたり、横断歩道を設置する場所を考えたりと、準備のお手伝いをさせていただいたんです。学校というのは地域社会の核になる場所ですから、学校作りをきっかけに地域の方々とコミュニケーションを図ることもできました。新しい街の新しいつながりを大切に、素晴らしい環境を守り育てようという住民の意識は強く、今でも建ぺい率30%の建築協定で、緑の美しい街並みが保たれております。

住まいという“基盤”が、いつも新たなチャレンジを後押ししてくれた”

こちらに住まわれてから、ご自身の心境の変化や、新たな出逢いはありましたか。

この土地に住居を構えたことによって、生活の基盤ができたように思いました。すると次第に、それまで子育てばかりに気が向いていた自分を見つめ直す余裕が生まれ、それ以前は考えもしていなかった仕事を始めようと思い立ったのです。

どのようなお仕事を始められたのでしょうか。

最初は出版社でライターのお仕事をさせていただきました。とはいえ、家事も疎かにはできませんから、通勤電車の中で原稿を書くなど、その日のうちに原稿を仕上げようと心掛けていましたね。短い期間でしたが、多くの人たちと出逢ってお話をうかがった経験や、与えられた仕事を全うする経験を通して、社会人として鍛えられました。子どもたちも大きくなり、少し大胆に動けるようになってからは、知人の経営するホテルで副支配人という立場で営業の経験をさせていただき、それから、さらなるステップアップを目指して、アメリカへ語学留学したのです。

和室には、お香が焚きしめられていました。

暖かな太陽の光が燦々と降り注ぐリビング。

アメリカへ語学留学ですか!? おいくつの時だったのでしょう。

47歳です。人生を80歳としたら、ちょうど折り返し地点あたりで、『Next Stage of My Life』を模索していました。 ただ、主婦の留学は壁も高く、とても悩みました。最終的には「今行かないと後悔するわよ」という娘の言葉に後押しされて。家族には1年間という約束で行くことにしたのです。

母親の行動力を尊敬しているからこそ、お嬢様も後押ししてくださったのでしょうね。

家族には本当に感謝しています。そのおかげで、また新しい出逢いができましたから。最初はニュージャージーの大学寮に入り授業を受けていたのですが、47歳ともなると頭も固くなりますし、なかなか英語が身につきません。そこで、「私は生きた英会話を学びにきたのだから」と一念発起して、ニューヨークの5番街の宝石店で無給で仕事をさせていただいたのです。でもこれがきっかけとなって、帰国後クイーンエリザベス2世号の同店のマネージャーになり、世界各国を豪華客船で廻る貴重な体験を積むことができたのです。本当に素晴らしい出逢いとなりました。

それからはどんなお仕事を続けられたのですか。

はい。それからは、その宝石店での実績を評価していただき、50歳で大手の宝飾会社に就職、その後63歳の定年退職まで勤めました。私はいつでも与えられた仕事に対して100%ではなく、120%で臨もうと思ってやってきたのですが、今思い返すと、それが多くの人たちとの出逢いや、次のチャンスにつながっていったような気がします。専業主婦だったころには考えられないような経験をたくさんしてきましたが、今になって考えてみますと、基盤となるこの家があり、ここで暮らす家族を守ってきた小さな努力の積み重ねが自信につながっていったのだと思います。だからこそ、見知らぬ外国の土地でも前向きにがんばることができ、キャリアを広げていくことができたんだなと思うんです。その意味では、住まいとの出逢いがあって、その後の私の人生は豊かに広がっていったと思います。ドラマチックな仕事人生の舞台は、この“わが家”だったといえるでしょうね。

家にいながら世界中の人々と出逢い、つながる日々。そして心は、10年後のまだ見ぬ未来――

洋室に改装された書斎にて。パソコンを楽しまれながら、ここからも新たな出逢いが生まれています。

宝飾会社を4年前に退職されて、現在はようやく一息つかれているんですよね?

はい、その間、子どもたちの結婚、独立、母たちとの同居、介護、他界、と激動の毎日でしたからね。今は、退職後にハローワークのパソコン教室に通ったことで、またまた忙しくなっています(笑)。「住まいの先輩」になったのもパソコンを覚えたことがきっかけでしたし、ボランティア活動でパソコンの能力が重宝にされて役員になってしまったり、なんとなくあわただしい毎日を過ごすようになってしまいました。

パソコンをきっかけに、また新たな輪が広がっているのですね。

留学時代の仲間、といいましても、私より若い方たちばかりですが、今、その仲間たちとmixiのコミュニティを通じて20年ぶりに交流するようになりました。3年前、和室を洋室にリフォームしてパソコンルームを造りました。今は、家にいながらにして瞬時に離れた友人や世界中の人々とつながることができる時代ですから、昔と変わらず今も大忙しなんです(笑)。でも、人と出逢うことほど楽しいことはないですね。

やはりこの家がkimikoさんのベースグラウンドなのですね。

本当にそうですね。ただ3年前、この家をリフォームした時は「あと10年、ここに住もう」と期限を決めました。10年後には、車の運転やお庭の手入れも難しくなってくるでしょうから、そのときには便利な立地のマンションに住み替えようと思っているんですよ。

30年もこの土地に住まわれていたわけですから、街や住まいに愛着があるのでは?

もちろん、後ろ髪を引かれる思いはありますが、新しい住まいに移ってもたぶん大丈夫だと思います。何より、そこではまた違う、新しい出逢いが待っているでしょうから。不安よりむしろ、その出逢いを今から楽しみにしたいですね。

いつ、どんなときでも前向きな気持ちで決断し、進み続けてきたkimikoさん。勇気ある決断の積み重ねが、たくさんの出逢いを引き寄せていったのではないでしょうか。そしてきっと、そんなふうにkimikoさんがいつでも前向きでいられたのは、“住まい”というベースグラウンドがどっしり構えていたからなのかもしれません。

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特集「住まいをめぐる出逢い 前編」

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