街の豊かさというお話が出ましたが、豊かさを感じるために大切なことはありますか?
川路氏 自分自身をセンサーにするという発想、うなずけます。僕は先ほど、日本人が住まいに求める幸せの形は、目に見えないものに移行していくのでは、とお話しましたが、それは教育ではないか、と個人的に考えています。子どもたちの五感を研ぎ澄ませるような住環境です。本来ならそれが自然にできればいいんですが、現代の住宅事情においては、なかなか難しい。そこで、これから新しく街をつくる計画があるのですが、その街には「五感の学校」というコンセプトのコミュニティを設けてみようと思っているんですよ。
パトリスさん 誰が五感について教えてあげるんですか?
川路氏 誰でも先生になれるんです。例えば街の自転車屋さんが先生になって、故障した自転車の修理方法を教えてあげる。自転車が故障したら自転車屋さんに持っていけばいいだけのことなんだけど、時間がかかってでも、自分の手で直してみる。そのときに、五感が磨かれていくんです。「自分で直せた」という喜びを得ることも、すごく貴重な経験になると思いますしね。
パトリスさん 五感は、自分自身をセンサーとして働かせるために、とても重要なもの。イヤだなというものを察知するためには、“五感がニュートラルである”ということが大切な条件だと思います。現代の日本人は、氾濫する情報のなかで“バーチャルな豊かさ”に惑わされてしまいやすい環境にありますよね。「豊かさとはこうである」といった、先入観に振り回されてしまいやすい。五感をニュートラルにするということは、そういった“バーチャルな豊かさ”に気を取られることなく、目の前の物事を素直に受け取るということ。その瞬間瞬間に感じたままを受け入れられることが、センサーとなるんです。 |