vol.034 あたたかい「おもてなし」、してみませんか
華やかなおもてなし料理を手軽に用意するためには

これまでのお話では、さまざまな角度から“おもてなし”の楽しみ方、楽しませ方について教えていただきましたが、今回の特集の締めくくりとしてご紹介するのは、簡単なのに華やかさが演出できるおもてなし料理術。
フレンチ家庭料理の教室だけでなく、ケータリングサービスも行う「Soleil(ソレイユ)」の料理人、樋口陽子先生に、そのコツを教えていただきます。

樋口陽子先生(ソレイユ主宰・料理人)
お料理の構成にはメリハリをつけて。いつものメニューも、切り方を変えるだけで印象が変わります。
Q

お料理を準備する“はじめの一歩”はメニュー作りですが、おもてなし料理のメニューの場合は、どのように考えればいいですか?

A

どういう人を招くかによって違ってきますが、共通するのは旬の食材を使うとよい、ということですね。旬のものは価格的に安いし、栄養価も高いですから。おもてなし料理だからといって、すべてのお料理に凝る必要はありません。その代わり、ローストチキンでも、パスタでも、デザートでも何でもいいので、お料理や盛りつけを工夫してどれか一品にインパクトのある演出をしてみましょう。まんべんなく全体を整えるより、何かひとつ存在感が突出しているといったメニュー構成のほうが、印象に残りやすくなります。
それから、“おもてなし”を楽しむために大切なのは、当日、いかにラクをするかということ。煮込み料理やオーブン料理の下ごしらえなど、前日までにできることは事前にすませておき、当日する作業はなるべく減らしておくといいですね。

Q

おもてなし料理を作るとき、調理法や盛りつけ方などは、どんなことがポイントになりますか?

A

ひとことでいうと、ひとつの食材をおいしく食べてもらうために、どれだけ工夫できるかですね。同じ食材であっても茹でたり、炒めたり、揚げたりといろんな調理法で仕上げるのがポイントです。また、同じお皿に盛りつける野菜は、大きさを揃えてカットすると仕上がりがきれいですし、食材の切り方を変えるだけでもお皿にのせたときの印象が変わります。例えばサーモンのマリネであれば、切る断面を大きくするとお皿にのせたとき華やかになりますよ。

Q

メインのお料理は、どんなものにすればいいですか?

A

グラタンとかラザニアとか、オーブンでできるお料理にすると楽ですね。キッシュなども前日に作っておき、当日はオーブンで温めるだけという段取りができるのでおすすめです。
オーブン料理のいいところは、オーブンに調理を任せておけば、もてなす人もパーティーに参加できる点。メインのお料理をテーブルに出す時間の目安は、スタート時点から1時間15分経ったころなので、その時間に料理が仕上がるように逆算してタイマーをかけておけば、もてなす側もキッチンにこもらず、みんなのおしゃべりの輪に入れます。そういう意味で避けたほうがいいのは、天ぷらなどの揚げ物。これは調理中目が離せずもてなす側がパーティーに参加できなくなってしまいますからね。

お料理は、テーブルにのせる瞬間が大切。盛りつけ方を工夫して、もっとおいしい印象に。
Q

ドリンクは、どんなものを用意しておけばいいですか?

A

大人の集まりなら、メニューに合わせてビールやワイン、焼酎、日本酒などを用意しておくといいのですが、より気を配りたいのがアルコールを飲めない人のためのドリンクメニューです。お酒は飲めないけれど雰囲気は味わいたいという人のために、手作りのフルーツビネガーを用意してみましょう。作り方は簡単で、サクランボやブルーベリー、イチゴなどのフルーツを氷砂糖と米酢に2週間ほど漬けておき、それを炭酸水で割って出すだけ。ほんのりとした果実の色合いがきれいですし、シャンパングラスで出してあげれば、ノンアルコールなのに、ちょっとお酒を飲んでいるような気分を味わってもらえると思います。
もっと手軽な方法としておすすめなのが、買ってきたオレンジジュースに、フレッシュオレンジの果肉をちぎって入れ、ミントの葉っぱを添えるといったひと手間。これだけで、市販のジュースが素敵な手作り風のドリンクに変身するんですよ。

Q

作ったお料理を、おいしそうに見せる工夫や盛りつけ方を教えてください。

A

できたお料理をテーブルにのせる際、「おおっ!」というインパクトを演出するには、大きめのお皿に高く盛りつけるのがポイントです。ひとつのお料理を最初からひとり分ずつ分けて出す方法もありますが、大皿で出してゲストの前で取り分けるほうが、見た目の印象は強いと思います。そして、取り分けるときは、ターキーのようなメインディッシュなら、食べやすさも考えて手前にお肉、向こう側に野菜を盛りましょう。そのとき、お皿に余白を多く作るように盛りつけるのも、お料理をおいしく見せるための方法です。

料理実例で学ぶ素敵な盛りつけ方
オードブル編:サーモンのマリネ

野菜は小高く盛りつけ、そこにサーモンをかぶせるように並べると、お料理が洗練された印象に(写真左)。サーモンの端を折るようにして盛ると、血合いの部分を隠すこともできるので、きれいな色合いに仕上げることができてまとまりもよく見えます(写真左下)。 平面的にたくさんの量を盛りつけてしまうと、サーモンの血合いの部分が見えてしまったり、お皿の余白が少なくなったりしてしまうため、バラついてまとまりのない印象になってしまいます(写真右下)。

メイン編:チキンの手羽先

手前に骨があると、食べるときに切りにくいのであまり親切ではありません(写真右)。
より食べやすように盛りつけるなら、ナイフで切りやすいよう身の部分を手前に向けておきましょう(写真左)。
このような肉料理は、盛りつけの際にナイフとフォークだけで切り分けるのは大変です。まずはナイフとフォークで切れ目をつけ、そのあとは清潔なキッチンばさみを使って切り離すといいでしょう。

Q

パーティーのあと片づけを簡単にすませるためのアイデアを教えていただけますか?

A

使う食器が増えればそれだけ洗い物も増えるので、食器の中に紙皿を混ぜて使うのも、ひとつの方法です。チーズなどのオードブルやデザートには紙皿や紙ナプキンを使い、メインだけはお皿に取り分けてあげるといった工夫をすれば、洗い物を減らしつつ、サービングにも変化がつくので楽しさが増すのではないでしょうか。
また、気軽な集まりなら、デザートに入る前に洗い物の協力をゲストにお願いするのもいいと思いますよ。シンクのまわりをしっかり片づけて、きれいに洗ってある食器をそばに置いておくと、そこに使った食器を運んできた人が「洗わなきゃ」という気持ちになって、洗っておいてくれるという場合もあるかもしれません(笑)。これもひとつの方法ですね。

今回、樋口先生に作っていただいた、おもてなし料理のレシピを教えてもらいました!

サーモン・マリネ

 

●材料(4人分)

生サケ・・・・・・・・・・・切り身2枚

ディル・・・・・・・・・・少々

エシャロット・・・・・・・・1個

ズッキーニ・・・・・・・・1/2本

赤ピーマン・・・・・・・・1/2個

塩、グラニュー糖・・・・・各大さじ4

コショウ、オリーブ油・・・適量

●作り方

1.

生サケはよく水気をふき、中骨などを取り除く。

2.

ボウルに塩、コショウ、グラニュー糖、ディルを入れて混ぜ合わせ、トレーなどに敷く。その上に生サケを置き、生サケの上からもかけておく(お好みでクミンなどを入れても可)。

3.

2時間くらいおき、生サケの水分がしみ出して堅くなったら、氷水で洗う。

4.

エシャロットはみじん切り、ズッキーニと赤ピーマンは5mm角のダイス切りにし、ズッキーニは軽く茹でておく。

5.

みじん切りにしたディルとオリーブ油を4と混ぜ合わせる。

6.

生サケは薄くそぎ切りにし、サラダを盛りつけたお皿にのせ、5をかける。

ローストチキン

 

●材料(4人分)

丸鶏・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1羽(1kg位)

タマネギ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1個

セロリ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1本

ベーコン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・50g

マッシュルーム・・・・・・・・・・・・・・・・2パック

天津甘栗・・・・・・・・・・・・・・・・・・・80g

エシャロット・・・・・・・・・・・・・・・・・1/2個

 

シブレット(アサツキでも可)・・・・・・・・・・適量

香味野菜(タマネギ、ニンジン、セロリなど)・・・適量

白ワインまたは水・・・・・・・・・・・・・・・適量

塩、コショウ、オリーブ油・・・・・・・・・・・適量

●作り方

1.

丸鶏の中身を取り除き、水気をよくふき取る。

2.

タマネギ、セロリは1cm角のダイス切り、ベーコンは拍子切りにする。マッシュルームは6〜8つに割り、天津甘栗は皮をむいて2つに割る。エシャロットは
繊維に沿ってスライスし、シブレットは小口切りにしておく。。

3.

フライパンにオリーブ油を熱し、ベーコン、タマネギ、セロリを炒め、全体に火が通ったら、マッシュルームを加えて炒める。

4.

あら熱が取れたら、エシャロット、甘栗、シブレットを混ぜる。

5.

鶏の内側に塩、コショウをし、4を詰めて口を閉じて脚をそろえる。外側にも塩、コショウをする。

6.

乱切りにした香味野菜を天板にしいて、形を整えた丸鶏を置き、オリーブ油を塗る。

7.

180℃のオーブンで30分程度焼く。途中、鶏から出てきた脂をかけながら焼くときれいな焼き色になる。焼き上がった丸鶏はオーブンの余熱で保温しておく。

8.

天板の野菜や脂を集めて鍋に入れ、そこに野菜が浸るくらいの水か白ワインを加えたら火をかけて沸かす。沸いたら火を止めてこす。こしたものを煮詰めて、ソースを作る。ソースは小皿に取り分けたあと、お好みの量をかけて。

ポムフィユテ

 

●材料

冷凍パイシート・・・・・・・・・・・・・・1枚

リンゴ(紅玉などの
酸味の強いもの)・・・1個

卵黄・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1個分

グラニュー糖、溶かしバター・・・適量

アイスクリーム
(バニラ、シナモンなど)・・・・・・適量

●作り方

1.

半分に切った冷凍パイシートを縦長にのばす。

2.

リンゴは真ん中の芯を取り除き、薄切りにする。切ったリンゴはパイ生地の上に少しずつずらして並べる。

3.

溶かしバターを並べたリンゴの上に塗り、その上からグラニュー糖を振りかける。

4.

パイシートの両端をパイの真ん中に向かって、リンゴに少しかかるようにして折り込み、水で溶いた卵黄をパイ生地に塗る。

5.

200℃のオーブンで15分焼く。オーブンから取り出したら切り分けて、熱いうちにアイスクリームをのせて食べる。

おさらい 簡単で華やかな“おもてなし”料理のポイント
お料理に使う食材は、安くておいしい旬のものを!
作り置きができるものは前日までに準備。当日はラクをして、もてなす人自身も楽しもう!
すべてのメニューをがんばって作る必要はなし!一品だけインパクトのある料理を用意して。
片づけの労力を減らすひと工夫も、“おもてなし”上手になるコツ!

楽しいけれど、準備が大変。自宅に人を招くことを、そんなふうに考えてしまいがちですが、おさえるべきポイントはしっかりおさえ、それ以外は力を抜くといった工夫ができれば、おもてなしが一気に楽しめそうな気がします。その日、その場に集う人たちと会話を楽しむひとときは、明日からの暮らしに元気と栄養をくれるはず。今回ご紹介した方法を取り入れて、さっそくあなたもホームパーティーを開いてみませんか?

樋口陽子(ひぐち・ようこ)

Name:
樋口陽子(ひぐち・ようこ)
Profile:

箱根「箱根ホテル小涌園」メインダイニング『フォンテンブロー』の厨房勤務などを経て、日常生活に息づくフランス料理を求めて渡仏。フランス・アルザス地方の惣菜店「メゾン・フェルベール」で普段着のフランス料理を学ぶ。

帰国後、日本ソムリエ協会認定「呼称資格」を取得。1999年、空間にとらわれない移動料理人を目指して「Soleil」を立ち上げる。
現在、ケータリングを主体に、ランチデリバリーや料理教室等を開催。
http://www5b.biglobe.ne.jp/~Y-Soleil/

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