vol.033 住まいのなかの「ドキッ」
安全に暮らすための空間別対策法

特集『住まいに潜む“意外な危険”とは?』では一級建築士の井上恵子先生から「事故」「災害」「犯罪」の面で盲点となりがちな危険についてお話をうかがいました。
ここでは、住まいの安全を守るための空間別の対策法について、引き続き井上先生にご紹介いただきます。

井上恵子(住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所)
玄関 鎌付デッドボルト/ディンプルシリンダー917

上:鎌付デッドボルト/トステム株式会社

下:ディンプルシリンダー917/株式会社ウエスト

玄関ドアをセキュリティ性能の高いものに

細い棒とピンセットのような工具を使ってカギをこじ開けるピッキング。ドアノブの中にシリンダーが内蔵されたタイプのカギだと、そうしたピッキング被害に遭いやすい傾向があることがわかっています。このタイプのカギを使用している場合は、ドリルでの破壊に強く、複製もされにくい「ディンプルキー」に交換することがおすすめです。
また、玄関からの侵入窃盗の手口には、ドアを破壊して手を入れたり、ドリルで穴を開けて棒を突っ込んだりして室内のサムターン(カギのツマミ)を解錠する「サムターンまわし」という手口もあります。この予防対策としては、市販のサムターンカバーを取り付けるのが手軽で有効でしょう。
最近では、カギをかけるとドア本体についた鎌部分が飛び出る「鎌付きデットボルト」を採用したカギもあります。これなら、バールによる不正解錠が防げるので安心です。
しかし何よりの大前提として心掛けていただきたいのが、玄関ドアに限らず、ひとつのドアに対してカギを2カ所取り付ける「1ドア2ロック」。そのうえで、玄関に防犯カメラを設置するなどの対策を取るのが効果的だといえます。

フットライトやベンチを設置するだけでも転倒防止に効果あり

雨の日などは玄関ポーチの床が濡れてすべりやすくなるため、内玄関での転倒事故が起こりがちです。基本的な対策としては、玄関の外にマットを敷くなどして濡れた靴や傘の水分を落とすことが挙げられますが、さらに玄関では靴を脱いだり履いたりする際にかがむことも多いので、ちょっと腰掛けられるようなベンチや手すりを設置するのがおすすめです。特に、高齢者の転倒を防ぐためには、ぜひご用意いただくといいでしょう。
ポーチと廊下に段差がある場合は、段差部分に鮮やかな色のマットを敷いたり、段差がわかるようにフットライトをつけたりするといいですね。高齢者は視力が弱くなっているので、足もとを明るくしておくとつまずきを防ぐことができ、転倒事故の防止につながります。

キッチン
カトージ ウッドスタイルオートゲート(ナチュラル)

カトージ ウッドスタイルオートゲート(ナチュラル)
/日本トイザらス株式会社

小さな子どもを近づけない工夫が大切

キッチンは、包丁、ガス、炎、熱湯など、子どもが興味を示しそうな危険物がたくさんあります。こうした危険物による事故を防ぐためにも、子どもをなるべくキッチンに近づけないことが基本となります。入口のあるタイプのキッチンなら、安全柵をつけて自由に出入りできないようにするのが手っ取り早い対処法です。安全柵は下部に隙間がなく、子どもがよじ登れない構造のものを選びましょう。

リビングルーム
耐震ゲル

耐震ゲル/マツ六株式会社

家電製品には防振シートを敷くのがおすすめ

住まいにおける地震対策の基本といえば、大きな家具に突っ張り棒や金具をつけて壁や天井に固定することです。しかし、最近はテレビなどのオーディオ機器も大型化しているので、これらの地震対策も見落としてはいけません。
大きな家電製品には、防振シートを敷くのがおすすめです。免震シート、耐震シートなど、いろんな名前で呼ばれていますが、このシートを敷くことで振動や衝撃が吸収され、転倒の防止に役立ちます。お手軽で安価ですので、ぜひ取り入れてください。
また、シャンデリアやペンダント式(つり下げ式)の照明器具は、地震時に揺れて落下する恐れがあります。こういった照明の光源には、落下時の飛散を防止する効果があるものも市販されていますので、そうしたものを選んでいただくのがいいでしょう。

浴室暖房機 温風/遠赤タイプ

浴室暖房機 温風/遠赤タイプ/TOTO株式会社

バスルーム
これからの季節は、脱衣所にも暖房を

寒くなっていくこれからの季節は、ヒートショックと呼ばれる現象が起こりやすくなります。ヒートショックとは、高齢者などに多く見られる、急激な温度変化によって引き起こされる体の変調のこと。入浴するために、暖かい部屋から寒い脱衣所やバスルームに行き、さらに熱い浴そうの中に入るなど、激しい室温変化にともなって起こることが多いのです。ヒートショックは脳梗塞や脳出血といった深刻な事故につながるケースも多く、浴そうの中でそうしたヒートショックを起こすと溺水事故にもつながってしまいますので、大変危険なのです。このようなヒートショックを防ぐためには、リビングや個室の暖房をあまり高めに設定せず、脱衣所やバスルームは暖房器具であらかじめ暖め、住まいのなかの温度差をなるべく少なくしておくよう気をつけてください。

手すりやマットを利用すれば、すべりにくさがアップ

また、バスルームでは子どもの転倒事故や溺水事故も起こりがちです。対策としては、洗い場から転んで誤って落ちたりしないよう、浴そうのお湯はためっぱなしにせず毎日抜くこと。そして、浴そうのふたをSGマーク付きのしっかりとしたもの(※)に替えるのも、事故を防ぐうえで有効です。
洗い場にすべりにくいマットを敷くことも、転倒を防ぐ有効な手段となります。

バルコニー・窓
人感ライト

人感ライト/竹中エンジニアリング株式会社

「足がかりになるものは置かない」ことが基本

バルコニーや窓は、子どもの転落に十分気をつけたい場所です。転落事故を防ぐには、バルコニーや窓のそばに子どもが登れるような足がかりを置かないこと。空調室外機やラティスフェンス、物置、椅子、テーブルなど、すべて足がかりとなってしまうのでご注意ください。バルコニーの場合、構造的にどうしても足がかりができてしまう場合は、足がかりの高さから1.1m以上の柵を設置しておくと安全性が高まることがわかっています。同様に、窓には床から85cm程度のところまで落下防止手すりを後付けしておくと安心です。

危険度が高い窓から対策を始めましょう

戸建て住宅の場合、狙われやすいのは、道路から見える正面側よりも、見通しのきかない奥まった側面や背面にある窓。すべての窓に対策を、と思うと大変なので、まずは危険度の高い側面や背面の窓に面格子をつけたり、補助錠を付けてダブルロックにしたり、防犯フィルムを貼ったりするといいでしょう。防犯フィルムとは、もともと災害時にガラスの飛散を防ぐために開発された、窓ガラス用のフィルム。これを貼ることで、たとえガラスを壊されても、なかなか穴をあけることができず、防犯効果が高くなるといわれています。同じように、マンションの場合は玄関側の窓とバルコニー側の窓に防犯対策を施すといいでしょう。人が近づくと点灯する防犯センサーライトを、バルコニーに取り付けるのも効果的です。

SGマーク

SGマークとは
SGとは (Safety Goods安全な製品)の略で、対象商品ごとに安全性の基準を定め、この基準に適合した製品にのみ表示できるマークをさします。このマークが表示されている場合、製品の欠陥による万一の人身事故に対する対人賠償責任保険がついています。

寝室・子ども部屋
家具は寝床から離し、枕もとには防災グッズを

就眠中は地震や火事のときに気づくのが遅れ、手遅れになってしまう危険があります。万一のときに備えて、寝室や子ども部屋には転倒すると危険な背の高い家具や家電はなるべく置かず、収納などはクロゼットを利用するようにしたいものです。家具を置く場合は、突っ張り棒や金具でしっかり固定したり、できるだけ寝床や出入口から離すようにしましょう。また、照明器具はペンダントタイプではなく、天井に直付けできるもののほうが安全です。
さらに、火災にいち早く気がつくためにも必ずおさえておきたいのが、住宅用火災警報器の設置です。もし設置されていないようなら、最低限、寝室だけでも優先的に取りつけるようにしてください。そして、枕もとには履きなれた靴や懐中電灯、携帯ラジオなどを常備しておくといいでしょう。

階段
カーペットやカラーテープを貼って、すべらない工夫を

転倒事故が多い階段には、手すりを必ず設置しておきたいものです。左右両側にあるといちばん安全ですが、どちらか一方にしか付けられない場合は、足もとが不安定になりやすい「降りるときの利き手側」につけましょう。階段がすべりやすい素材の場合は、階段の滑り止め用として市販されている薄手のカーペットを踏み面に貼ることで、転倒防止につながります。高齢者がいる住まいでは、視力が弱くても段差がはっきりと認識できるよう、踏み面の鼻先に鮮やかなカラーテープを貼ったり、足もとを照らすフットライトを設けるのもおすすめです。

住まいのなかで実践したい、さまざまな危険対策。その基本は、それぞれの空間がもつ役割に応じて、できることから対策を施すことなのですね。これまで特別な対策を講じていなかった方も、今回ご紹介した方法を試していただければ、明日からの安心につながるのではないでしょうか。

住まいに潜む“意外な危険”とは?

井上恵子(いのうえ・けいこ)

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井上恵子(いのうえ・けいこ)
Profile:

一級建築士。インテリアプランナー。「住宅の品質確保の促進等に関する法律」住宅性能評価評価員登録、増改築相談員。建設会社入社後、建築設計部にて主にマンションの設計に関わる。2004年、住まいのアトリエ井上一級建築士事務所設立。

著書に『住宅リフォーム計画』(学芸出版社)がある。オールアバウトジャパンにて「住まいの性能・安全」のカテゴリーでガイドを務める。
http://allabout.co.jp/house/houseability/

 

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