vol.033 住まいのなかの「ドキッ」
住まいに潜む“意外な危険”とは?

安全で、安心できるはずの住まい。
しかし、実際には不慮の事故や災害、そして侵入窃盗など、住空間のなかには思わぬ災難につながる危険も少なくはないようです。
大切な家族をアクシデントから守るには、日ごろ盲点となりがちな隠れた危険について一度しっかりと認識しておく必要があるのではないでしょ うか。
そこで今回は、住まいの安全対策に詳しい一級建築士の井上恵子先生に住まいに潜む“意外な危険”について教えていただきました。

安全に暮らすための空間別対策法

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井上恵子(住まいのアトリエ 井上一級建築士事務所)
油断は大敵。住まいの危険はあちこちに隠れています。
住まいに潜む意外な危険(1)犯罪
在宅中でも進入される「居空き」が増加中

平成18年の侵入窃盗犯罪は、警察に届けられたものだけで20万5,463件。このうち、住宅を対象とした犯罪が全体の約60%を占めているのですが、なかでも最近増えているのが、居住者が昼寝や食事などをしているスキに侵入して金品を盗む「居空き(いあき)」です。
侵入窃盗に遭いやすいのは居住者が寝静まった夜だと思われがちなのですが、実は日中のほうが侵入被害に遭う危険性が高いのです。なぜなら、日中は主婦が一人で住まいにいることも多く、その場合は防犯ブザーが切ってあったり、どこかのカギが開いていたりすることが多いため、そのスキが狙われやすいわけなのです。特に居空きの場合、侵入者は居住者と鉢合わせたとたんに居直り強盗になる可能性が高いので、空き巣以上に危険だともいえます。未然に防ぐよう、日ごろからの注意が大切なのです。

在宅中でも侵入される「居空き」が増加中
狙われやすいのは「手入れの行き届いていない家」
狙われやすいのは「手入れの行き届いていない家」

いったいどのような家が侵入窃盗犯のターゲットにされやすいかというと、それは居住者の心掛けひとつで変わるものなのです。例えば、ポストのなかを数日間整理しないでおいておくと、新聞やチラシがたまってしまいますよね。すると「この家は留守だろうから侵入しやすい」と判断され、狙われやすくなるのです。同様に、玄関先が散らかっていたり、壁の落書きがそのままだったりする場合も、侵入窃盗犯に「この家は狙いやすい」と思わせることになります。手入れの行き届いていない場所は「ここなら狙っても見つかりにくいだろう」という印象を侵入者に与えてしまいやすいのです。

このようなスキを与えないためには、侵入窃盗犯が「近づきにくい雰囲気」を作ることが大切です。庭先をきれいに手入れする、壁の落書きはすぐに消す、洗濯物をいつまでも出しっぱなしにしない。家のすみずみまで目が行き届いていることがわかるよう、メンテナンスをきちんと行っておくことが、防犯対策の基本です。「この家は押し入るスキがなさそう」「ここを狙ったらすぐに通報されそうだ」という雰囲気作りから、住まいの防犯対策を始めてみてはいかがでしょう。

近隣とのコミュニケーション不足が招く犯罪も

また、ご近所同士で挨拶をしてコミュニケーションを深めたり、持ち回りで防犯パトロールを行ったりといった、地域ぐるみの取り組みも重要です。特に、都会は近隣とのコミュニケーションが希薄であることが多いと思いますが、そうなると、不審者の侵入になかなか気づくことができなくなってしまいます。世の中に防犯対策のアイテムは数多くありますが、何より手軽で強力な対策となるのは、しっかりとした近隣のコミュニティ。見慣れない人がいても「どちらをお探しですか?」などと声をかける意識が地域に浸透していれば、不審者には近寄りがたい場所だと認識されるようになります。目を見て挨拶をするだけでも効果はありますから、さっそくご近所の方と実践していただきたいですね。

住まいに潜む意外な危険(2)災害
地震による被害が大きいのは、寝室や子ども部屋

地震は、いつ、どこで遭遇するかわかりません。それだけに、住まいのすべての場所が危険ともいえるのですが、なかでも盲点になりがちなのが寝室なのです。人は1日の3分の1は寝室で睡眠をとっていることになり、しかもその間は無防備な状態にあります。そのため、寝室で災害に遭う確率は大変高く、避難も遅れやすいために危険性の高い状況だといえるのです。実際、95年に発生した阪神・淡路大震災は、午前6時前というほとんどの人が眠っている時間帯に起こり、家具による圧死などで大きな被害をもたらしました。寝室が意外にも危険な場所となりうることを、ぜひ忘れないでいただきたいと思います。
また、お子様の場合は子ども部屋が寝室となることが多いと思います。本棚などの家具の配置には十分に注意してあげてください。

地震による被害が大きいのは、寝室や子ども部屋
気づきにくい、コンセントからの火災

住まいの火災は、思わぬ条件が重なって起こることがあります。例えば、ペットボトルに太陽光線が長時間当たることでレンズの作用で光が集束されて出火したり、アロマキャンドルの炎が近くのぬいぐるみに燃え移って火災となったり。
見落としがちなところでは、「トラッキング現象」にも注意が必要です。これはプラグとコンセントの間にたまったホコリが空気中の水分などを吸収し、プラグの差し込み部分に電流が流れて発電、発火するというもの。見えるところは掃除をしても、冷蔵庫の後ろにあるコンセントなど、簡単に手の届かない場所まではあまり掃除をしませんよね。すると、火の手があがるまで気づくことができず、手遅れになるケースが多くなるんです。長期間プラグを接続したままの状態で使用する家電製品は、定期的な点検を心がけることが必要ですね。

住まいに潜む意外な危険(3)子ども・高齢者の事故
子どものよじ登りによる落下に要注意
子どものよじ登りによる落下に要注意

窓辺にソファーやテーブルといった「足がかり」があると、小さな子どもであってもそこをよじ登ることができてしまいます。また、子ども自身がよじ登らずとも、窓からものを放り投げて落とすといった危険も引き起こすことがあります。カギの開閉の仕方も親の動作を見て学んでいることがあるため、自分で開けてしまうことも不可能ではありません。小さなお子様のいるご家庭では、窓辺に子ども用ベッドやちょっとした棚など、足がかりになるものを置かないことが大切です。

高齢者に多く起こりやすい、リビングルームでの転倒事故
高齢者に多く起こりやすい、リビングルームでの転倒事故

高齢者の事故で圧倒的に多いのは、転倒事故です。転倒が起こりやすい場所として、浴室、トイレ、階段の3カ所が挙げられますが、意外に多いのがリビングルームでの事故です。なぜなら、リビングルームはテーブルや棚などの家具をはじめ、雑誌や子どものおもちゃなど、つまずく原因になりやすいものが多い場所だから。特に足腰が弱い高齢者にとっては、こうしたものにつまずくと即座に転倒事故へとつながってしまいがちなのです。リビングルームの場合、転倒した際に家具や柱などの角で頭をぶつけてしまうことも考えられますので、注意が必要となります。

高齢者に多く起こりやすい、リビングルームでの転倒事故

このように住まいには、“意外な危険”が多く潜んでいるわけなのですが、そうした危険性を知り、あらかじめ対策をとることができれば、そうした危険は十分に回避することができるのではないでしょうか。
みなさんの住まいに隠れた“意外な危険”を防ぐためにも、まずは以下のチェックシートで住まいの危険度を確認してみてください。

早わかり!住まいの意外な危険度チェック

Yesの数が3個以上 危険度 小 Yesの数が4〜5個 やや危険 Yesの数が6〜7個 危険度 やや大 Yesの数が8個以上 危険度 大

安全対策に十分な心配りができています。その意識を家族全員が共有できていればパーフェクト。そうでない場合は、家族で万一の場合に備えた話し合いをするなどして、意識の向上に努めてください。

安全への意識は高いほうだといえます。ただし、まだ改善すべき点はありそう。この機会に住まいの中を再点検して、防犯・防災・事故への対策をもう一歩進めてみましょう。

家庭での防犯や防災対策に対し、少し楽観的に考えていませんか? 家族の安全を守るには、日ごろの心掛けや注意が大切です。できることから少しずつ対策を始めてみましょう。

万一の事態に対し、日ごろの備えがほとんどない状態です。このままでは、災害や犯罪に遭ったときの対処が遅れてしまいそう。家族を守るためにも、今一度、安全な暮らしへの配慮を見直してみてください。

井上先生のお話から、何気なく暮らしている私たちの住まいには、なかなか気づくことができない危険が想像以上に多いということを知ることができました。では、こうした危険を防ぐにはいったいどのような対策が必要なのでしょうか? 次のコーナーでは、具体的な危険対策について井上先生にうかがっていきます。

安全に暮らすための空間別対策法

井上恵子(いのうえ・けいこ)

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井上恵子(いのうえ・けいこ)
Profile:

一級建築士。インテリアプランナー。「住宅の品質確保の促進等に関する法律」住宅性能評価評価員登録、増改築相談員。建設会社入社後、建築設計部にて主にマンションの設計に関わる。2004年、住まいのアトリエ井上一級建築士事務所設立。

著書に『住宅リフォーム計画』(学芸出版社)がある。 オールアバウトジャパンにて「住まいの性能・安全」のカテゴリーでガイドを務める。http://allabout.co.jp/house/houseability/

 

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