vol.032 「和」の感性をインテリアに取り入れる
伝統的な日本の美意識を住まいに生かす

日本人にとって「和」の空間というのは、やはり心が和む場所ですね。
けれども近代的な暮らしに慣れ親しんでしまった私たちにとって、
改めて「和」を取り入れるということは難しいことでもあります。
そこで、「日本に住まう」というコンセプトのもと
さまざまな空間プロデュースを手がけている瀧勝巳さんに、
もっと気軽に「和」の暮らしを楽しむために今一度見直しておきたい
“日本人本来の美意識”について、お話していただきました。

日本人の美的感覚で楽しむ温故知新のインテリアコーディネート術

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瀧勝巳(THE COVER NIPPON/総合プロデューサー)
日本人だけが持つ、繊細な美意識を再発見しよう
見直されている「和」の世界

今、さまざまなジャンルで「和」が注目されています。私は専門学校の講師もしているのですが、最近の20歳前後の学生たちは海外旅行に何度も出かけているようですね。その彼らに話を聞くと、多くの学生が5カ国以上の国に行ったことがあるといいます。これまで多くの輸入家具を取り扱ってきた私自身もそうですが、数多くの国々を見てきた人ほど、日本のよさを再発見することが多いように思います。輸入モノというだけで、もてはやされた時代はもう終わりなのでしょう。気軽に海外へ行ける時代が到来し、さまざまな国や文化の“本物”と触れる機会に恵まれてきたからこそ、今、日本の伝統や独自の美意識が見直されるようになったのではないでしょうか。

photo : TKO-M. architects
四季があるからこそ生まれた日本独自の美意識

そのようにして今、改めて見直されている日本固有の美意識とは、いったいどのようなものなのでしょう。
日本人の美的感覚は、この国ならではの美しい四季にルーツがあるのではと思います。季節の移り変わりに伴うさまざまな自然の美に、日本人の心は感銘を受け、磨かれていったことでしょう。けれども日本が近代的な暮らしを手に入れるにつれ、季節のうつろいを感じにくくなりました。そして、本来持っているはずの美意識が鈍ってしまったのではないでしょうか。経済力をつけたがゆえに、世界中のあらゆるものを手に入れられるようになり、そのスタイルをただ真似るだけになってしまったところもあるでしょう。しかし、日本人が本来持っている固有の美意識というものは、ほかの国では決して見ることのできない上質で洗練されたものではないかと思うのです。

日本人だけが持つ“さじ加減”の文化

たとえば、日本人の舌が持つ味覚ひとつとっても、その繊細な感性をうかがい知ることができるんです。そもそも味覚とは、視覚や聴覚をはじめとする五感のなかで最も“鈍感”な感覚。飲食店を思い浮かべていただくとわかるのですが、お店は料理の味だけでなく、店舗の内装やBGM、椅子やテーブルの質感など、味覚以外の四感も満足してもらうように多大な配慮がなされているものです。それだけ味覚とは、それひとつだけでは完結できない、ほかの四感のサポートを必要とする感覚だといえるのです。
ところが日本人は、そんな鈍感な感覚である味覚に関して“さじ加減”という文化を持っています。じつはこの言葉、英語には訳せない表現なんですよ。つまり、さじひとつで味が変わると考えるような繊細な味覚文化は、英語圏には存在しないということなのです。鈍感な感覚である味覚に対して、他国では見られない繊細な文化を発展させてきたのが日本の伝統なんですね。
この繊細な感覚が、味覚だけでなく、さまざまな伝統的芸術における美意識を生み出していると考えるのは、決して不自然ではないと思います。

繊細な美意識が生み出した「わび」「さび」の世界

そんな美意識によって生まれたもののひとつが、茶の湯や能楽などに代表される「わび」「さび」の世界です。利休と秀吉の有名な「朝顔の茶会」という話がありますね。庭一面に咲き誇る朝顔を楽しみに訪れた秀吉に対して、利休はすべての朝顔を摘み取り、一輪の朝顔だけを茶室に飾って出迎えました。こうして、一輪の花が持つ美しさを表現したわけです。
とはいいましても、「わび」「さび」だけが日本の美意識のすべてではありません。装飾を廃した簡素な造形美が評価されている桂離宮と同時代に、絢爛豪華な装飾美を誇る日光東照宮が建立されているように、正反対のように思える美的感覚が共存しているというのも、日本の伝統文化ならではといえるでしょう。こうした相反する美の形を、日本人は絶妙なバランス感覚で取り入れ続けてきたのだと思うんです。

“繊細さ”“バランス感覚”“融合の感性”で和の住まいを作る
東の果てにたどり着いた古今東西の美

こうした “バランス感覚”は、日本の土地柄が生み出したともいえます。日本は東洋の東の果てに位置します。そのため、ヨーロッパからもアジアからも、長い交易路をへて物資や文化がたどり着いたことでしょう。その間、各都市においていいものだけがふるいにかけられ、西洋と東洋の厳選された品々だけが日本に集まってきたのです。そうした地理条件にいた日本人は、古くから古今東西の美しいものを上手に融合させる感性を培っていたのではないかと思うのです。そうした先人の感性を、私たちはもっとお手本にしてもいいのではないでしょうか。
たとえばインテリアなら、さまざまな国のものが交じり合うと、ちぐはぐなイメージになる可能性があります。けれども、東の果てに住む日本人独自の“融合の感性”を生かすことができれば、見事なコーディネートを生み出すことができると思うのです。

異文化の“見えない共通項”を感じ取ろう

たとえば家具同士、色も形も合っていないのに、なぜかしっくりと馴染んでいるということがあります。そんなときは、歴史が同時代だった、同じような文化的背景があった、似たようなコンセプトのもとに生まれた芸術だった、というように目に見えない共通項が存在していることがあるんですね。私たち日本人が伝統として、きっと受け継いでいるであろう“繊細さ”“バランス感覚”“融合の感性”を呼び起こすことができれば、この目に見えない共通項を感じることができ、うまく組み合わせることができるのではないかというのが私の考え方です。それがイタリア製だから、有名ブランドのものだから、という既存の価値基準で判断するのではなく、日本人だからこそ持ちうる美意識について再認識したうえで、自分自身の感覚をたよりに判断してみてはいかがでしょうか。そうした感性をインテリアに取り入れることができれば、きっと日本人にしか表現できないオリジナリティあふれる空間が完成することでしょう。

美しい四季に恵まれていることや、東の果ての島国という地理条件などが、日本人にしかない繊細な美意識をはぐくんだという瀧さんのお話。私たちがもっと日本固有の美的感覚を知り、日常に生かすことができるようになれば、住まいにも上手に「和」を取り入れていくことができそうですね。
今回のお話からは、日本人にはどのような美意識があり、それがどのようなルーツを持っているのかを知ることができました。そこで次は、こうした日本人固有の感性をどのようにインテリアに生かし、「和」の住まいを楽しめばいいのか、具体的な方法などをおうかがいしてみたいと思います。

瀧勝巳(たき・かつみ)

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瀧勝巳(たき・かつみ)
Profile:

2000年に(株)フュージョンカンパニーを設立し、滋賀・近江八幡にショップ「aura(アウラ)」を開店。驚異的な売り上げで、国内外の家具関係者に広く名を知られるようになる。ライフスタイルショップ「ラユンヌ」表参道のプロデュースを手がけたのち、2005年に「メイド・イン・ジャパン・プロジェクト」の

総合プロデューサーに就任。「THE COVER NIPPON」のプロデュースを手がける。他ショップへの人材育成、販売オペレーション指導、商品企画も手がけるほか、各種セミナーで数々の講演をこなしている。各地の地場産業と積極的に関わり、日本のモノ作り文化の発信に貢献している。

 

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