はお風呂が大好きで浴室に特別な関心を持っています。お風呂場は私のマホロバです。 いつの頃からか、早朝にそして夜にお風呂に入るのが長い間の習慣になっています。オハラショウスケさんやマルト・ボナールさん(注1)にも負けてはいません。今回は私の浴室のご紹介を兼ねて、お風呂にかかわるお話をいたします。
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山もみじの紅葉に彩られたゲストハウスのお風呂。 壁のタイルは明治時代の輸入品です。 |
私は幼年時代を群馬県にある祖母の大きな農家で過ごしました。そこで毎日入ったのが五右衛門風呂です。ご存じない方も居られると思いますが、五右衛門風呂は鉄釜を直火で下から焚くお風呂で、お釜がとても熱くなるので、子供にとってはとても恐ろしく、入浴のときは必ず祖母やばあやさんと一緒でした。同じ屋敷内にはお客さま用に建てられた大きなゲストハウスがあり、そこのお風呂は総檜造りの純和風のもので、大層贅沢に作ってありました。そのお風呂にもよく祖母と一緒に入ったことは私の温かい幸せな思い出です。その後多くの家に住み、多くの国々をも巡りましたが、浴室には(も)夢を持ち続けてきました。
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週末住宅の庭にある五右衛門風呂。 原型のまま保存されています。
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この祖母の家屋敷一式は現在まとめて「有形文化財登録家屋」となっています。五右衛門風呂は現在ではもう使っていません。檜の浴室は浴槽・洗い場も時を経てすでに石に張り替えられていますが、壁のタイルはオリジナルな明治期の輸入品です。
五右衛門風呂はこのように別棟になっています。 隣は屋根つきの井戸。すべて有形文化財登録家屋です。
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この浴室の窓を開けると目の前にたいそう大きな山もみじがあり、晩秋には見事な紅葉が湯船からたっぷり楽しめます。また反対側の窓からは満月が昇ります。電灯を消し、蝋燭をともしお香をくゆらせ、そしてお酒のひとつも持ち込めば、もう最高のお月見になります。
同じ敷地内には私たちが週末生活する「母屋」があり、20年前にそこを全面改造した折に浴室を新設しました。ここの浴室は2階にあり、昔の台所からの「煙出し」の空間を利用して浴槽を設置しました。この「煙出し」はいわば煙突で、ドーマー窓状に屋根から突き出した構造になっていて、ちょうど浴槽が「煙出し」のスペースにうまく納まりました。浴室は白いタイルと白い陶器の浴槽で白一色にしました。この浴室の形状を細部まではっきり浮き上がらせる効果がありました。浴槽にゆったりと沈むと一面の柔らかな白色に包まれ、一日の煩事に疲れた神経が徐々に癒されます。 |
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群馬の「母屋」の20年前に新築したお風呂。 浴槽の設置されているドーマー屋根部分は、実は昔の煙出し煙突です。 窓の上の桟はオリジナルの「煙出し桟」です。
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私の理想とする浴室の重要な要素は:
1) |
湯船からあふれ出るたっぷりなお湯を受ける洗い場があり、贅沢にお湯が使える (いわゆるジャパニーズスタイル) |
2) |
ソファーなどの置かれた室内と一体感がありインテリア要素が濃厚にある |
3) |
屋外の自然に開かれた「露天風呂」的要素があり開放感を満喫できる |
この3つの欲張った要素は互いに矛盾している面もあるので、そう簡単にはすべての条件を満たすようにはいきません。近年東京の家を改装したときに浴室も一新しましたが、その折にはこれらの条件を満たす努力をしました。しかし集合住宅ですので多くの制限もあり、まだまだ私の理想の浴室は実現していません。でも心の中ではいつも理想の浴室造りの夢の実現に向けて心弾ませています。
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3つの理想を追求した東京の家の浴室。透明のドアは浴槽の中間までにして、入浴時の開放感と洗い場の飛沫の納まりを両立させました。 |
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浴槽から見た室内風景。ドアのない広々とした視界をつくりだし、布張りの椅子や照明器具を配して室内との一体感を考えました。 |
注1:フランスの印象派の画家ピエール・ボナールの夫人で大のお風呂好きだったそうです。
■ツァイヨシコ 暮らしの情景<終了のご挨拶>
梅がほんのりと香る季節になりました。皆さまごきげんいかがお過ごしでしょうか。
去年の9月から始まりました私のエッセーもこの2月でひとまず締めくくりといたします。
また再度、私の小さなたびの思い出や生活の中のささやかな夢の実現など
お話させていただく折もあると思います。
ヒヤシンスの花が香り、あたりはもう春です。
私の小さな書きものが皆さまのお目に留まってくださったらこんな嬉しいことはありません。
ありがとうございました。ごきげんよう。またね。 |