日本の夏ならではの神聖な光

夕涼みのあかり

身の回りでの光の演出というと、なぜか“冬のネタ”になることが多いようです。
雑誌などで照明が特集されるのもクリスマスが近づく初冬のころですし、冬が長い北欧の国々に、デザインのいい照明器具や心が豊かになるような照明術が多く見られる・・・なんていうお話も少し寒くなったときのほうがリアリティがあるようです。これは、照明=暖かさをもたらすもの、と考えられているからなのでしょうか?
しかし光の風物詩は、必ずしも冬だけのものではありません。熱い夏の日でも宵の時間となって少し気温が下がるころ、日本の各地では光の美しい演出がはじまるのです。今回は蒸し暑い日本ならではの「夏の夜の光」についてお話したいと思います。

お盆の風習 迎え火・送り火

古くから、日本の夏には神聖な光にふれる習慣があります。お盆のころに見られる、迎え火と送り火です。冬の夜に楽しむ“ゆらめき照明”でもご紹介したように、炎には生命のリズムに同調するゆらぎのリズムがあります。そうした炎の力が、昔の日本人の目には神聖なものとして映ったのかもしれません。

そもそも迎え火とは、8月13日の夕方に家の軒先で松の皮などを燃やし先祖の霊を迎えるもので、送り火は、盆明けの16日に迎え火と同じ場所で火を焚いて霊を送り出すものです。先祖への思いを炎に託す日本特有の夏の風習ですが、最近はあまり見かけることはなくなりましたね。

幻想的な景色が広がる「千灯供養」

私が以前訪れた印象的な場所に、京都の「あだし野 念仏寺」というお寺があります。何かの雑誌に掲載されていたのですが、このお寺の美しい写真に魅かれて訪れたのでした。あだし野は古代からある死者風葬の地で、その遺骸を空海が埋葬したとされる念仏寺の境内には、無縁仏の墓である8000体の石仏・石塔が並んでいます。冒頭でご紹介している写真は、その石仏・石塔です。

このお寺には、お盆の時季とは少しずれますが、毎年8月23、24日に催される「千灯供養」という行事があります。これは石仏・石塔の一体一体にろうそくを灯し、無縁仏を供養する有名な宗教行事です。そこには、暗闇の中に数え切れないほどのろうそくの炎と石仏の姿が浮かび上っていて、まさに目が潤むような幽玄の美しさでした。そして、このあかりを体験して感動するのは、日本人であるからに違いないと感じたのでした。これは単なる光の景色ではない、人と人とがどこかで繋がっているのだという連帯感のようなものが直接に訴えかけてくるからなのでしょうね。

荘厳な風情をかもしだす、“日本の夏”の光

広島の灯篭流し
今年の夏は、日本の風情を感じに各地の光にまつわる行事を体験しに行かれてはいかがでしょう。
普段の慌しい生活では、厳粛な日本の趣を感じる機会も少ないのではないのでしょうか。

幻想的な光とともに、日常では味わえない“心が洗われる時間”を過ごせるかもしれませんね。
●兵庫・五百羅漢千灯会(らかんじせんとうえ)
兵庫県加西市の羅漢寺にある五百羅漢は、いつ何のために作られたのか知られていない謎に包まれた石仏群です。毎年、本尊・薬師如来の縁日でもある8月8日にこの五百羅漢の前にろうそくを灯し、人々が願いを唱えます。

●広島・灯篭流し
広島市・原爆ドームの前を流れる元安川などで、原爆の日の8月6日に行われます。原爆犠牲者や戦没者の魂を鎮めるため、また平和を祈るために全国から人が集まり、それぞれの思いを込めて灯篭を流します。

●京都・大文字焼き
8月16日に行われる京都の大文字焼きは、正式には「五山の送り火」と呼ばれる京都の伝統行事で、その名の通り亡くなった人の魂をあの世へ送るための大規模な送り火です。京都を囲む5つの山に「大文字」、「左大文字」、「舟形」、「鳥居形」、「妙法」を火でかたどります。

また毎夏、大勢の人でにぎわう一大イベントの花火大会も、本来は精霊送りの行事だったのだそうです。今年は遠い昔のご先祖さまたちを思いながら、夜空に咲く大輪の花を眺めてみてはいかがでしょうか。

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コメント
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2. | 投稿者: じゅん (2008年08月01日)

おひさしぶりです。
私はどちらかというと、冬の光のイベントよりも夏の光のイベントの方が好きかもしれないです。幻想的であり、そして日本ならではの意味が込められているからです。東海林さんは、こうした夏のお祭りの照明デザインを手がけられたことはあるのでしょうか?

1. | 投稿者: ジュピタ (2008年07月22日)

夏 灯りというと山鹿の灯篭まつりをイメージします。
女性が灯篭の形をした頭に載せ踊るのをみるととても
幻想的です。

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