光のアーティスト、ジェームズ・タレル
天井の四角い穴から空の光を楽しめる「アウトサイドイン(光の館)」(外部リンク)

科学者? 芸術家? 異色の経歴をもつジェームズ・タレル

みなさんはジェームズ・タレルという人の名前を聞いたことがありますか?

タレルは光を使ったインスタレーション(空間芸術)で知られる、アメリカ・カリフォルニア州生まれのアーティストです。
知覚心理学と数学の学位を取得したのちに美術・芸術について学び、その後は、アメリカ・NASAの航空研究所で研究を続けながら、65歳になる今大変精力的に作品をつくり続けています。
一見しては、ヘミングウェイのような白いあごひげを蓄えた老紳士です。

タレル作品との感動の出会い

私が、ジェームズ・タレルの作品に初めて出会ったのは、今からおよそ10年前のことでした。当時、世田谷美術館で開催されていた巡回展「ジェームズ・タレル展――夢の中の光はどこからくるのか?」で、タレルの作品と待望の初対面を果たしました!
しかも、来日していたご本人とお会いすることもできたのです。

この展覧会を訪れてみて実感したのは、タレル自身がつねづね語っている「体験することに価値がある」ということでした。事実、体験型のインスタレーションが数点あり、それぞれにインパクトのあるものばかりでした。

体で光を感じる作品の数々

たとえば「ガス・ワークス」という作品では、ベッドに横になると、直径3.5mの大きな球体の中心に送り込まれます。ちょうど病院のCT検査を思い浮かべていただくとイメージしやすいかもしれません。その球体の中でたかれるストロボとネオン管の照明を、鑑賞者は全身で感じることができます。これはタレル自身が飛行機を操縦中、雲の中に入ったときに感じた“全身が光で包まれる体験”を再現した装置なのだそうです。

また、「パーマライト」という作品は、昔、美容院でよく見かけたパーマ用の機械を頭にかぶり、その中で発せられる光を頭頂部で感じてみよう、というインスタレーション。人間がまだヒトに進化する以前、頭頂部には「松果体」という組織があって、視神経以外でも光を感知していたそうなのですが、この作品では、人類が進化の過程で退化させてしまった第3の視覚を刺激することで、ほんのわずかに残っている「松果体」の潜在能力を呼び覚ますという試みがなされていたのです。

ジェームズ・タレルのここがすごい!

タレルはただ、美しい光を鑑賞者の眼前に差し出しているのではありません。
彼の作品を楽しむためには、ある程度の時間をかけ、暗さに慣れる必要があるのです。作品の持つ繊細な光を感じるためには、鑑賞者の視神経のモードをわずかな光にも反応できる「暗所視」モードにしなければなりません。いわば、自分から作品にはたらきかけ、その価値を探しに行く、そういう積極性がない限り、作品を鑑賞することはできないのです。

光が美しいのはあたり前で、それを見せることにはあまり意味がない。
タレルが求めるのは美しさのもっと先にあるもの。そのことに私は強く共感しています。

ゴールデンウィークに訪れてみては?
ジェームズ・タレルの作品に出会えるスポット

「光の館」では、タレルが手がけたさまざまな光の仕掛けを体感できる。
みなさんも、ジェームズ・タレルという人物に興味を持っていただけたでしょうか?
作品を「体験」してみたいな、と思ったら、百聞は一見にしかず、です。
ぜひタレルの作品に会いに出かけてみてください。

現在、日本で彼の作品を鑑賞できるスポットと、作品の概要をご紹介しましょう。
金沢21世紀美術館
所在地:石川県金沢市広坂1-2-1
・ガス・ワークス(1993) 前述の世田谷美術館で展示された、タレルの実体験を模した装置です。光に包まれる感覚を体験することができます。
・ブルー・プラネット・スカイ(2004) 約11m四方の正方形の部屋の天井にある開口部から空を見ることができる作品で、まるで絵画のように見えます。一日中見ることができますが、おすすめは、日没とともに変化する空の色を楽しむことができる夕暮れ時です。

地中美術館
所在地:香川県香川郡直島町3449-1
・アフラム、ペール・ブルー(1968) プロジェクターを使って、壁から四角い光の塊が飛び出して浮かんでいるように見せています。
・オープン・フィールド(2004) 暗い洞窟の中に頭を入れてみると、蛍光灯とネオン管で表現された青い空間が無限に広がっています。
・オープン・スカイ(2004) 四角に切り取られた天井の空は、日没時には壁に埋め込まれたLEDがさまざまな色に変化して、空と壁の色が変わるように錯覚させます。

南寺(ベネッセアートサイト直島)
所在地:香川県香川郡直島町本村
・バックサイド・オブ・ザ・ムーン(1999)かつてお寺があった場所に建築家、安藤忠雄がタレルの作品に合わせて建物を設計しました。暗所視という人間の身体感覚の変化を利用した作品で、真っ暗な部屋に入って15分ほど経つと、暗闇に目が慣れて光のスクリーンが見えてきます。

熊本市現代美術館
所在地:熊本県熊本市上通町2-3
・ミルク・ラン・スカイ(2002) 図書館に色が変化する光の天蓋を設置して、「光の図書館」を演出しています。

光の館
所在地:新潟県十日町市上野甲2891
・光の館(2000) タレルが谷崎潤一郎の『陰影礼賛』からインスピレーションを受けて制作しました。建物そのものがタレルの作品で、さらに宿泊することもできます。

ゴールデンウィークも間近に迫っています。この機会に「ジェームズ・タレルに出会う旅」など、計画してみてはいかがでしょうか?
きっとタレルの作品が、今まで体験したことのない光の世界へ、みなさんを連れて行ってくれることでしょう。
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コメント
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2. | 投稿者: ヤッターマン (2008年04月29日)

「光が美しいのはあたり前で、それを見せることにはあまり意味がない」ですか……。
深いですね。美しさのもっと先にあるものを見つけに、タレルの作品に会いに出かけてみたいものです。
今度新潟に行く機会があったら、絶対「光の館」に泊まろうと思っています。

1. | 投稿者: カエドン (2008年04月23日)

素敵な照明ですね。
照明って本当に贅沢だなって思います。
なかなかこだわれない物の一つかなって思います。

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